仕事の引き継ぎとは?円滑に行うための手順とコツも解説

引き継ぎとは、異動や退職の際に、業務内容や仕事のやり方を他の人に伝えることです。別のプロジェクトに移る時や昇進のタイミングなどでも発生するので、多くの社会人が経験する代表的な業務といえます。

引き継ぎがうまくできれば、その後の業務もうまく回ります。逆に引き継ぎが不十分だと、後任者のパフォーマンスが下がるだけでなく、組織全体の生産性低下にもつながります。

そこで今回は、はじめて引き継ぎを行う人や引き継ぎのやり方に不安を感じている人に向けて、基本的な手法を5ステップで解説します。また、円滑に行うコツも8つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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    引き継ぎとは

    会社で働いていると、様々な場面で引き継ぎ業務が発生します。引き継ぎがうまくいけば、担当者が変わっても今まで通りのパフォーマンスが維持されます。

    一方、引き継ぎがうまくいかないと、当事者間だけでなく、会社全体に悪影響を及ぼす可能性もあります。

    最初に、仕事における引き継ぎとはどのようなことなのか、引き継ぎの重要性などとともに解説していきます。

    引き継ぎとは異動などの際に業務内容を他の人に伝えること

    引き継ぎとは、異動や退職などの際に、業務内容や仕事の進め方や関係者の連絡先などを他の従業員に伝えることです。

    引き継ぎが発生するのは、たとえば次のような時です。

    • 別の部署や関連会社に異動する時
    • 産休や育休、長期の休職に入る時
    • 連日で有給休暇を取る時(リフレッシュ休暇など)
    • 業務担当者から外れる時(昇進、別プロジェクトへの合流など)
    • 退職する時

    以上のように、前任者が引き続き会社内や部署内にとどまるケースもあれば、会社からいなくなるケースもあります。

    いずれにしても担当者が変わっても以前と同じレベルで業務を滞りなく行えるように、適切に引き継ぎを行う必要があります。

    新たな担当者が分からないことがあった時に前任の担当者に問い合わせる場面も出てくるかもしれません。しかし、原則として、後任者は引継書や引き継ぎ時に受けたレクチャーをもとに、可能な限り独力で仕事を進められるようにしておかなくてはなりません。

    生産性の維持のために引き継ぎは重視される

    ビジネスシーンにおいて、引き継ぎが重視されるのは生産性維持のためです。担当者が変わる度に前任者や周りの人に仕事の進め方ややり方を聞いていては、効率が下がります。今までと同じ労働力や人件費を投下しているのにもかかわらず、アウトプットが少ないと生産性が下がります。結果的に部署や企業の売上・利益にも影響が出てしまうでしょう。

    また、前任者だけでなく、部内の同僚や先輩社員、上司などに問い合わせを行う度に、相手は仕事の手を止めることになります。そうなると、相手の生産性や業務効率も下がるので、より一層組織全体のパフォーマンスが低減するという悪循環に陥ってしまいます。

    そのような負のスパイラルにはまらないためにも、適切な引き継ぎを行い、生産性の維持に努める必要があります。

    引き継ぎをしないと発生してしまうリスク

    引き継ぎをしない場合には、生産性の低下はもちろん、ノウハウの蓄積や伝達にも支障が出てきます。

    引き継ぎをしないと発生してしまうリスクとして、以下のようなものが考えられます。

    • ノウハウやナレッジが継承されない
    • 生産性やパフォーマンスの低下
    • 取引先など関係者からの信頼低下

    前任者は、効率性や正確性を向上させるために、最適な手法を選びながら業務を進めてきたはずです。そこには、担当者ならではの独自の工夫やアイデアも取り入れられているでしょう。

    そのようなナレッジが失われると、後任者はまた一から最適な方法を手探りで見つける必要が出てきます。例えば、前任者が解決したはずの課題に後任者が直面して、ミスが多発したり業務スピードが落ちたりすることも考えられます。これは、組織のパフォーマンス低下にとどまらず、社外にも影響が及びます。

    もし、取引先にも影響が出るようなミスであった場合、相手からの心証を悪くする可能性もあり、取引の停止などにつながるリスクも考えられます。取引先は担当者が変わっても同様のクオリティを求めるはずです。担当者が変わることで品質やスピードが落ちることに対しては、厳しい目を向けられる可能性が高いでしょう。

    顧客との関係維持のためにも、引き継ぎミスから発生するリスクは可能な限り排除するべきなのです。

    引き継ぎを行う5つのステップ

    スムーズな引き継ぎを行う方法を、次の5ステップで解説していきます。

    • 業務を洗い出す
    • 引き継ぎのスケジュールを決める
    • 引き継ぎの資料を作成する
    • 実際に引き継ぎを行う
    • フォローを行う

    業務を洗い出す

    まずは自分が担当していた業務の洗い出しから始めます。

    業務を棚卸しする際には、最初に大項目をリストアップし、そこからさらに細分化していきます。そうすることで引き継ぐべき業務内容の抜け漏れを防止できます。

    すべての項目をリストアップすることで、引き継ぎ内容のボリュームを把握できます。これにより、その後のスケジュールを作成しやすくなります。また、業務の見える化によって、不必要な項目が可視化されるメリットもあります。不要な業務が見つかった場合には、上司に相談した上で引き継ぎ項目から削除するという方法もあります。

    さらに、リストアップした段階で別の担当者に引き継いだ方が良いケースも出てくるかもしれません。その場合にも、上司や関係者と調整しながら、適切な引き継ぎ先を検討しましょう。

    引き継ぎのスケジュールを決める

    洗い出した業務をもとに、引き継ぎのスケジュールを組んでいきます。引き継ぐ業務のボリュームや難易度などを整理しながら、異動日や最終出勤日などから逆算して日程を決めます。

    スケジュールはできる限り余裕をもって組みましょう。前任者も後任者も通常業務を進めながら、引き継ぎ業務を並行して行います。お互いにイレギュラーな仕事が発生したり、急用ができたりして、引き継ぎの時間がとれなくなるケースも考えられます。

    また、社歴が浅い社員や当該業務に不慣れな人に仕事を引き継ぐ場合には、想定以上に時間がかかることもあります。余裕のあるスケジュールを引いておけば、引き継ぎが間に合わなかったという事態を回避できるでしょう。

    引き継ぎの資料を作成する

    次に引き継ぎの資料を作成します。資料には次のような内容を記載しましょう。

    • 業務内容(概要と目的など)
    • 業務の進め方・やり方
    • 業務のスケジュール
    • 注意点やポイント
    • トラブル発生時の対応方法
    • 起こりがちなミスや過去のトラブル一覧
    • 関連データの保存場所・保存方法
    • 関係者の連絡先

    資料は原則、口頭や手書きではなく資料データとしてまとめます。前述したとおり、前任者は担当者として蓄積したノウハウを、もれなく後任者に伝える必要があります。担当者時代に直面した課題や分かりづらい点などについて、注釈や補足を交えながら資料に追記しておきましょう。

    前任者が担当を外れた後は、後任者がこの資料を見ながら業務を進めることになります。この資料を見れば、スムーズかつ正確に業務を遂行できるという水準にもっていく必要があります。自分が習得したナレッジを確実に共有できるように、相手の目線に立った資料づくりを心がけましょう。

    実際に引き継ぎを行う

    資料が完成したら、事前に立てたスケジュールをもとに引き継ぎを行います。

    実際にやり方を見せながら教えていきましょう。作業時に、ゆっくりと相手の理解度を確認しながら行うのがポイントです。一方的に話したり、質問を受けるタイミングを作らずに、進めてしまうと相手は困惑してしまうかもしれません。あくまでも相手がゼロベースの知識であることを念頭に、懇切丁寧にレクチャーすることを意識しましょう。

    また、業務によっては他の社員や関連会社のスタッフと一緒に行うものもあるでしょう。その際にはできる限り時間を合わせて、協力しながら引き継ぎを行いましょう。中には初対面という人もいるかもしれないので、今後のコミュニケーションのために顔合わせの機会を設けることも重要です。

    フォローを行う

    時間的な余裕があれば、フォローも行いましょう。後任者にとっては、最初は「何が分からないのかも分からない」という状態かもしれません。最初のレクチャー時には質問が思い浮かばなかった場合でも、後から疑問や不明点が出てくることもあります。そうした疑問や不明点を、一つずつ潰すことで、後任者の理解度が深まっていきます。

    ただし、急な異動や退職などによって、十分な時間を確保できないケースも考えられます。そのような中でもしっかりと業務内容やノウハウなどを伝えるためには、資料の精度を高めることが重要になります。曖昧な点を残さない、業務の抜け漏れを防止する、トラブルが起きた後の解決策を記載しておくなど、在籍中に資料を作り込んで十分な引き継ぎができるように責任を持って業務にのぞみましょう。

    業務の引き継ぎを円滑に行うための8つのコツ

    上記の5つのステップを実施することで引き継ぎは行えます。ただし円滑な引き継ぎには次の8つのコツも同時に押さえておくことが重要です。

    • 業務の全体像を伝えてイメージしやすくする
    • トラブルや注意点についても伝える
    • 相手が理解できるよう伝える
    • 引き継ぎを行うことを第三者にも伝えておく
    • 引き継ぎの資料を分かりやすくまとめる
    • 十分な時間をかけて引継ぎを行う
    • 引き継ぎに関する資料を上司が確認する
    • チーム内で情報共有を徹底する

    これからはじめて引き継ぎを行うという人にとっても役立つ情報となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

    業務の全体像を伝えてイメージしやすくする

    引き継ぎに際しては、後任者に業務の全体像やゴール、目的などを伝えるとイメージがわきやすくなるので、理解が深まるでしょう。

    仕事を教える時にはまず、その仕事がどのようなものなのか概要を伝えます。概要は、担当する業務のみを伝えるのではなく、全体像を伝えることが大事です。その仕事が全体の中でどのような位置づけなのか、何のために行うのか、その工程の前後の仕事はどのようなものかなどを共有すると、教わる方も腹に落ちやすくなります。

    また全体像と同時に、最終的なゴールも伝えておく必要があります。最初に、「何をするのか」「どのような状態になれば完了なのか」を共有することで前任者・後任者の間でのイメージの乖離を防ぐことができるでしょう。

    トラブルや注意点についても伝える

    前任者が経験したトラブルや注意点についてもしっかりと伝えておきましょう。自分のミスで起こしてしまったトラブルや、何度もミスをしてしまった項目について共有しておくことで再発防止につながります。

    特に顧客や取引先など、外部の関係者が関わる業務の場合、同じミスが何度も発生すると、信用問題につながりかねません。担当者が変わっても業務の質が下がらないように、十分注意しましょう。

    また、トラブルやミスが発生した後の対策や改善策、自分なりの反省点なども合わせて共有しておくことも重要です。

    相手が理解できるよう伝える

    相手が業務内容や作業手順を理解できるように、伝え方を工夫しましょう。引き継ぎを行う方は、多くの場合、その業務に習熟しています。一方で後任者は理解や知識が不足しているケースが多いでしょう。独りよがりに情報を詰め込みすぎたり、相手が当然知っているものとして説明を省くと、後任者は混乱するでしょう。

    一つひとつ丁寧に伝え、「理解しているか」「不明点はないか」などを確認しながら引き継ぎ業務を進めていきましょう。社歴の違いなど、前任者と後任者の関係性によっては、相手が質問しづらいケースもあるでしょう。

    そうした場合でも、たとえばレクチャー後にチャットやメールで不明点をまとめて送ってもらったり、次の機会に不明点を解消する時間を設けるなど、相手の立場に立ってものごとを考えましょう。

    引き継ぎを行うことを第三者にも伝えておく

    引き継ぎを行うことを、部署内の別の社員や業務に関連する人たちに伝えておくことも大切です。後任者が若手社員だったり、転職してきてまもない社員の場合には、すぐに独り立ちとはいかないケースも考えられます。そうした場合、前任者がいなくなった後に、業務に精通している社員や先輩社員がフォローする場面もでてくるでしょう。

    後任者のみがすべてを把握しているという状態では、もしもの時に業務が停滞したり、勘違いによって大きなミスが発生する可能性もあります。関係者にも最低限の情報を伝えておくことで、万一の事態が起きても柔軟に対応できるはずです。

    引き継ぎの資料を分かりやすくまとめる

    前任者が退職や休職などでいなくなった後は、後任者が資料をもとに業務を実施します。そのため、引き継ぎ時に使う資料は分かりやすくまとまっている必要があります。

    必要な情報を過不足なく盛り込み、特にミスが発生しそうな部分は注釈をつけるなどして注意を喚起しておきましょう。

    また、引継書や関連資料などのデータ類も、分かりやすい場所に保存しておきましょう。後任者が必要な時にすぐにデータにアクセスできるように、共有場所も工夫する必要があります。

    WordやExcelなどで引継書を作成する場合は、引き継ぎの途中でいくつかのバージョンができてしまう可能性があります。最終的にどれが最新なのか分からないという状態にならないように注意しましょう。

    十分な時間をかけて引き継ぎを行う

    引き継ぎは、十分な時間をかけて行いましょう。作成した資料を渡すのみで終わったり口頭で説明したりだけではうまく伝わらない可能性があります。

    一通りの業務を引き継いだ後に実際に後任者が一人でやってみて、疑問が生じたら逐次それを解消するなどして、理解度を深めていく必要もあります。

    時間をかけて引き継ぎ業務を行う中で、抜け漏れが判明することもあるでしょう。その際には、前任者が資料に必要項目を追加し、曖昧なまま放置しないようにしましょう。

    引き継ぎは、基本的には前任者と後任者の間で行われます。ただし、限られた人だけで行っていると、資料が分かりづらかったり、抜け漏れが発生しても気がつかないこともあります。そのため、引き継ぎ資料は上司にも確認してもらいましょう。

    同時に、資料の管理方法や資料の共有範囲などについても上司に指示を仰ぎましょう。

    チーム内で情報共有を徹底する

    引き継ぎが発生した時には、「業務を誰から誰に引き継ぐのか」「引継書の内容」「関連データの保管場所」など、さまざまな情報をチーム内でしっかり共有しましょう。

    データ共有の方法として、共有フォルダを使ったりチャットやメールでやりとりしたりするケースもあるでしょう。ただし、この方法ではどこにデータがあるのか、分からなくなるおそれがあります。

    コミュニケーションツールなどの専用ツールを導入することで、いつでもどこからでも必要な時にデータにアクセスできるようになります。また、権限設定を行うことで、データの修正や編集も行えるので、引継書や関連資料の管理も徹底できます。

    まとめ

    本記事では、引き継ぎのやり方を5ステップで解説し、円滑に行うためのコツも8つ紹介しました。引き継ぎは、多くの社会人が経験する基本的な業務です。ここで取り上げた基本的なやり方や重要性、リスクは理解しておきましょう。

    適切な引き継ぎが行えれば、担当者が変わった後も生産性や効率性を維持できます。顧客との良好な関係もキープできるはずです。

    円滑な引き継ぎを行うためには、当事者だけでなくチーム内で情報共有を徹底することがポイントになります。クラウド型のナレッジ共有ツールを導入するなど、情報共有の仕組み作りにも着手しましょう。

    例えば、社内向け情報共有ツールのQiita Teamは、豊富なテンプレートと分かりやすい記述法によって誰でも手軽に情報の蓄積・共有が行えます。絵文字リアクションやコメント機能など、コミュニケーションを活発化する機能が多数搭載されているのも特徴の一つです。日常業務や引き継ぎ業務で課題を感じている組織の担当者は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。