「ガイドラインの作成方法がかわからない」
「ガイドラインとマニュアルの違いとは?」
「社員にとってわかりやすいガイドラインを作るためのコツが知りたい」
社内でガイドラインを作成することになった社員の中には、多くの疑問や不安を感じている人も多いでしょう。
そこで今回は、ガイドラインとは何かを知りたい人に向けて、ガイドラインの基本とマニュアルの違いなどを解説していきます。また、なぜ両者の違いを意識する必要があるのかについても紹介します。ガイドラインを作成する時に注意したい点も2つ取り上げるので、担当者の方はぜひ最後までご覧ください。
おすすめの情報共有ツール「Qiita Team」

Qiita Team(キータチーム) は、誰でも「かんたん」に読みやすい記事が書ける、社内向け情報共有サービス。チームのコミュニケーションを活性化し、ともに成長し合える場をご提供します。登録実績6,278社!!
ガイドラインとは「指針や指標」のこと
ガイドライン(Guideline)とは、指針や指標のことです。
通常、ガイドラインは、国や自治体、業界団体、会社などによって定められます。事業者や個人は、ガイドラインを参照することで行動指針や方向性、判断基準が理解できます。
例えば、コロナ禍において国や行政は多くのガイドラインを作成しました。内閣官房では、「新型コロナウイルス感染症対策」として業種別ガイドラインを策定し、ホームページで公開しています。
業種別ガイドラインの概要
業種別ガイドラインは、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るため、各業界団体が、専門家や関係省庁の助言等を踏まえ、業種ごとに適切な感染防止策を自主的に纏めたものです。令和5年3月3日現在、195個の業種別ガイドラインが存在します。
(出典:業種別ガイドライン|内閣官房)
このように、国が指針を示すことで、各業界団体やその所属企業は感染症対策で実施すべき施策が立てやすくなります。ガイドラインの遵守によって、企業や団体は足並みをそろえることができるため、混乱せずに感染症対策が行えるようになるのです。
ガイドラインとマニュアルは目的が違う!
ガイドラインと似た用語にマニュアルがあります。社内でガイドラインやマニュアルが整備されている会社も多いはずです。また、担当部署によっては、ガイドラインやマニュアルの作成が必要になる業務もあるでしょう。
両者は目的が異なるため、活用や作成時に注意が必要です。ここでは、ガイドラインとマニュアルの違いと、その違いを意識すべき2つの理由を解説していきましょう。
ガイドラインとマニュアルの違い
ガイドライン | マニュアル |
行動の方向性を示す人によって実行後の行動が異なる | 行動内容まで規定する誰が行っても同様の結果が得られる |
ガイドラインは先に記した通り、「指針」「指標」「方向性」「判断基準」などを指します。マニュアルは、「行動内容」「業務フロー」「手順」などを網羅した内容となっています。
つまりガイドラインはゴールやルールを示すだけで、具体的な手段や行動は規定していません。一方、マニュアルはいつ・誰が・何を・どのように行うのか、を明確に定めています。ビジネスシーンでいえば、業務の進行方法を記した手順書やシステムやツールの使い方を記した取扱説明書などがマニュアルに該当します。
また、ガイドラインは特定の業界や事業者に方向性を示すためのものなので、進め方や手段は各企業や個々人の判断に委ねられます。そのため、ガイドラインに沿って判断・行動した後に得られる結果は多種多様です。一方で、マニュアルにはプロセスが規定されています。実施する順番や活用するツールやシステムも決まっています。そのため、マニュアル通りに実施すると、誰が行っても同様の結果が得られることになります。
ガイドラインとマニュアルの違いを意識すべき理由
ガイドラインとマニュアルは似たものとして捉えられる傾向にあります。しかし、資料の作り手は両者を明確に区別する必要があります。なぜ、ガイドラインとマニュアルの違いを意識しなければならないのか、その理由は次の2点です。
- 分かりやすい資料を作るため
- 正確な資料を作るため
分かりやすい資料を作るため
作成者がガイドラインとマニュアルの違いを意識することで、読み手にとっても分かりやすい資料となります。社員や関係者が読む前に、その資料がガイドラインなのかマニュアルなのかが分かっていると、あらかじめどのような内容が書いてあるのかが推測できる状態で読めます。
例えば、会社でSNSを運用したいと考えた場合、アカウントの作成方法や発信方法が記載されているのは「マニュアル」です。ガイドラインには具体的な手法や手段は記載されておらず、あくまで運用方針や社内ルールのみの記載にとどまります。手段が知りたいのに、ガイドラインを参照しても、読み手は混乱するばかりです。再度マニュアルを参照することになるので、業務が非効率になります。
作り手がガイドラインとマニュアルのどちらなのかを意識して作成し、タイトルをみれば一目瞭然の状態にしておくことで、読み手の理解を促進することができるでしょう。
正確な資料を作るため
ガイドラインとマニュアルの違いを意識することは、読み手の助けになるだけでなく、作り手にとっても重要です。2つの違いを明確にしておくことで、必要な情報が網羅されている正確な資料が作成できるでしょう。
例えば社内に在宅勤務を導入するためにガイドラインを作成する場合には、「基本概要」「導入の際の留意点」「導入メリット」「労務管理上の懸念点」「在宅勤務に関する社内ルール」「在宅勤務環境下における労災・安全管理」など、運用のための指針を網羅する必要があります。一方、在宅勤務のマニュアルには、「ネットワーク環境の構築方法」「勤怠管理ツールの使い方」「各種デジタルツールの操作方法」など、具体的な手順や事例などを記載することになります。
ガイドラインとマニュアルに記載する内容はまったく異なるのです。ガイドラインは行動基準やルールを記載し、マニュアルは具体的な手順や操作方法などを記載するということを意識すれば、作り手は必要な項目の抜け漏れを防止できるでしょう。
一般的に用いられるガイドラインの例
ここでは、いくつかのガイドラインの例を紹介します。
- テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン/厚生労働省
- 金融分野における個人情報保護に関するガイドライン/金融庁
- 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン/独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
<テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン>
厚生労働省が企業及び労働者に向けて作成しているガイドラインです。コロナ禍以後、急速に普及しているテレワークを適切に導入できるようにサポートするための資料です。テレワークの基本概要から、導入時の留意点、労務管理で注意すべきことやルールの策定方法、お役立ち情報などが記載されています。
(出典:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省)
<金融分野における個人情報保護に関するガイドライン>
金融庁が金融分野における個人情報取扱事業者(銀行、証券会社など)に向けて、作成しているガイドラインです。本ガイドラインでは、事業者が適切に個人情報を取り扱うための活動を支援する目的で定められています。取得した個人情報の利用目的、データの取り扱い、漏洩した場合の報告、第三者への提供の制限などが記載されています。
(出典:金融分野における個人情報保護に関するガイドライン|金融庁)
<中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン>
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が中小企業における情報セキュリティ対策を支援するために定めたガイドラインです。経営者が知っておくべき情報セキュリティの重要性や、現場での実践方法などが記載されています。また、近年利用が広がっているクラウドサービスを安全に利用するための手引きなども収載しています。
(出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン|独立行政法人情報処理推進機構)
ガイドラインとマニュアル作成の際に気を付けるべき2つのポイント
ガイドラインを作成することになった担当者が気をつけておきたいポイントを2つ紹介します。マニュアル作成との比較も交えながら、解説していきましょう。
- テーマについての方向性を明確にする
- 内容を抽象的に記載する
テーマについての方向性を明確にする
ガイドラインを作成する時は、読み手の理解を促進するためにもテーマの方向性を明確にしましょう。ガイドラインでは、具体的な手法を記載するのではなく、ガイドラインを遵守することでどのようなゴールを目指すべきかを示します。
例えば、先に挙げた3つのガイドラインの例(在宅勤務/個人情報保護/情報セキュリティ対策)では、在宅勤務の円滑な導入や金融分野における適切な個人情報の取り扱い、中小企業が直面する情報セキュリティ対策に関する方向性が明瞭に記載されています。
逆に言えば、方向性ではなく具体策や手法、使用するツールやシステムが記載されているものはマニュアルです。資料の作成者は方向性(=ガイドライン)と具体的な手段(=マニュアル)の記載を混同しないように注意しましょう。
内容を抽象的に記載する
ガイドラインには抽象的な内容が記載されます。指針・指標・方向性・判断基準は、いずれも概念的な記述となります。ガイドラインを読んだ企業や社員が、その内容をかみ砕いて個々人で行動計画に落とし込みます。使用するツールやシステム、業務プロセスなどは、読み手の主体的な判断に委ねられるのです。
一方で、マニュアルに記載されている内容は具体的なものです。手法やプロセスが明確化されており、通常、マニュアルを逸脱した方法や手段を自主的に選択する余地はありません。統一された手法を守ることで、アウトプットの品質や体裁が統一化されます。例えば業務マニュアルを参照すれば、社歴の浅い社員とベテラン社員の間での品質の差が生まれづらくなるというわけです。
まとめ
本記事では、ガイドラインの基本的な知識やマニュアルとの違いを解説してきました。ガイドラインは、社内で策定するものから行政庁・業界団体などが作成するものまでさまざまです。
ガイドラインの作成担当者は、社員にとってわかりやすい資料を作る必要があります。そのためには、ここで解説した2つの注意点(「テーマについての方向性を明確にする」「内容を抽象的に記載する」)などを意識することが大事です。また、ガイドラインなのかマニュアルなのかがあらかじめわかれば、読み手はその資料の内容や意図が事前に理解できるでしょう。
社内で担当者に任命された人は、国や業界団体が作成している資料を参考に、分かりやすいガイドラインを作成し事業に役立てましょう。