「コールセンターの立ち上げに伴って、電話対応マニュアルの作成を命じられたが、作り方が分からない」
「現場で使われる電話対応マニュアルの作り方が知りたい」
──電話対応マニュアルの作成担当者は、作成方法や運用の際のポイントに関して多くの課題を抱えているのではないでしょうか?
対応品質や人材の定着を図るためにも、コールセンターでは電話対応マニュアルの整備が必要不可欠です。しかし、現場で使われる電話対応マニュアルを作るのは簡単なことではありません。せっかく作成したのに使われなかった…とならないようにポイントを押さえて作成・運用する必要があります。
そこで今回はマニュアル担当者に向けて、電話対応マニュアルの必要性、作り方、運用の際の注意点などを詳しく解説していきます。
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コールセンターの電話対応マニュアルの必要性
コールセンターは顧客満足度の向上を図るためにも重要な部門です。企業の中でもっとも顧客との接点が多い部門ともいえるため、対応品質をアップさせることは企業価値の向上にも寄与するでしょう。
そのような重要な役割を担うコールセンターの運営において、電話対応マニュアルの整備は必須です。ここではコールセンターが直面している一般的な課題を解説した上で、電話対応マニュアルの必要性について考えていきましょう。
コールセンター運営の課題とは
多くのコールセンターではカスタマーサポートやオペレーターの人材確保・採用に課題を感じています。また中規模〜大規模のコールセンターでは多人数のスタッフを抱えているため、品質の均一化やセンター全体の対応品質の向上に苦慮しているケースも多いでしょう。
そもそもカスタマーサポートやテレフォンオペレーターは離職率の高い職種といわれています。また人手不足が進む状況下では新たな人材の確保は容易ではありません。人の入れ替わりが激しい現場では、採用コストだけでなく教育コストも増加します。
経験値の浅い人材や採用直後の人材は、どうしても前任の担当者やベテランのスタッフよりも品質が劣る傾向があります。顧客対応のレベルが低い場合には、ユーザーからのクレームが発生したり、企業の信用やブランド価値の毀損にもつながりかねません。
このような、「採用・教育」と「品質向上」という2つの大きな課題を解決する手段として、電話対応マニュアルの整備が必要とされているのです。
電話対応マニュアルによって品質の向上・均一化が可能
電話対応マニュアルを活用することで、上述した課題の一つである「品質」の向上や均一化が可能になります。
電話対応マニュアルを使えば、顧客に正確な情報を伝えられ、適切なビジネスマナーで対応可能です。顧客が必要とする解決策をスムーズに提案できるでしょう。経験値に左右されない品質が期待できるため、コールセンター全体のレベルの均一化に貢献するのです。
人材育成がしやすい
電話対応マニュアルの導入が進めば、「採用・育成」面での課題も解決できるでしょう。
新入社員や研修中の社員は電話対応マニュアルを参照することで、正確な受け答えや製品・サービスに関する知識を習得できます。よくある質問への回答やクレーム発生時のエスカレーションもスムーズに行えます。
新たな人材が不安を覚えることなくスキルアップに注力できる環境を整備するためにも、電話対応マニュアルの導入が必要になるのです。
コールセンターの電話対応には2種類ある
コールセンターでの電話対応は、「インバウンド」と「アウトバウンド」の2種類があります。
インバウンドとは、コールセンターにかかってくる電話のことです。アウトバウンドとは、オペレーターが相手に電話をかけることです。2つの業務ともに、電話対応マニュアルの整備が必要です。マニュアルを活用すれば、先述した「品質」「採用・育成」面でのメリットを期待できます。
ただし、より導入効果が得られるのは「インバウンド」の方といえるでしょう。インバウンドはある程度ユーザーからの問い合わせ内容を推測できます。マニュアル作成時に、カテゴリや内容をきちんと整理することで、スタッフはすぐに業務に活用できます。
クレームへの対処方法をケースごとにまとめることで、誰でも正確かつスムーズに対応できるでしょう。そうすることで顧客満足度の向上にもつなげやすくなります。
コールセンターの電話対応マニュアルの作り方
効果的な電話対応マニュアルを作成するためには、次の手順を踏むことが重要です。
- 電話対応マニュアルに入れるべき情報を集める
- 基礎情報マニュアルを作る
- トークスクリプトを作る
電話対応マニュアルに入れるべき情報を集める
最初のステップは、マニュアルに入れるべき情報の収集です。電話対応マニュアルに記載する情報の種類は、通常次の通りです。
- 会社情報
- 商品やサービスの情報
- ツールの使い方
- ビジネスマナー
- トークスクリプト
このうち、「会社情報」「商品やサービスの情報」「ツールの使い方」「ビジネスマナー」は基礎情報といわれるものです。社員やスタッフである以上、知っておかなければならない必要最低限の情報です。
またトークスクリプトは台本のことで、事前に策定しておくことで高品質な顧客対応が可能になります。トークスクリプトを作成する際には、ベテランのオペレーターや対応品質の良いスタッフにヒアリングするのが一般的です。
下記で、「基礎情報マニュアル」と「トークスクリプト」の作り方について、詳細を解説していきましょう。
基礎情報マニュアルを作る
基礎情報マニュアルに入れるべき項目は、先述の通り次の4項目です。
- 会社情報
- 商品やサービスの情報
- ツールの使い方
- ビジネスマナー
それぞれについて、簡単に説明していきます。
会社情報
カスタマーセンターは企業の窓口ともいえる部門です。そのため会社に関する基本情報を知っておく必要があります。基本的には、会社のホームページや会社案内に記載されている情報が網羅されていれば良いでしょう。
商品やサービスの情報
次に商品やサービスの概要を記載します。コールセンターに入る問い合わせの多くが、商品やサービスにかかわるものでしょう。使い方はもちろん、スペック情報、品ぞろえ、関連商品・サービス、故障時の対応、返品依頼、意見や要望など多岐にわたります。こうした質問に答えられるように、詳細な情報を網羅しておく必要があるでしょう。
ツールの使い方
多くのカスタマーセンターには、専用のツールが導入されています。そのためスタッフが操作に迷わないように、ツールやシステムの使い方がわかるようなマニュアルも記載しましょう。
もし顧客対応中にツールやシステムが使えない場合、相手を待たせてしまったり、必要な情報を画面に映し出せないといった事態に陥ります。結果的に、対応の不備がクレームにつながるリスクがあるので注意しましょう。
基本的な使い方に加えて、操作時の注意点についても記載しておくとトラブル発生のリスクを軽減できます。
ビジネスマナー
カスタマーセンターのスタッフには、電話対応の基本的なビジネスマナーが求められます。社会人として身につけておくべきマナーに加えて、オペレーターならではの会話のスキルも必要になるでしょう。
丁寧かつ正確な言葉遣いや、聞き取りやすい話し方などについてポイントや実例を入れてマニュアルに記載します。
クレーム電話の場合には、相手が怒っているケースも多いので、失礼のない態度や言葉選びが必要になります。もし社会人としての基本が身についていないと、火に油を注ぐ結果になりかねないので注意しましょう。
トークスクリプトを作る
電話対応マニュアルの質を左右するのが、トークスクリプト(台本)です。トークスクリプトがきちんと整備されていれば、新人のオペレーターでもベテランと同様の対応品質が期待できます。
効果を高めるためのトークスクリプトの作成方法は、次の3つです。
- ペルソナ設定
- ペルソナの持つ課題を想定する
- フローチャートを作成する
ペルソナ設定
まずは、コールセンターに電話を掛けてくる、代表的な顧客像(ペルソナ)を設定します。
トークスクリプトでは具体的な会話例を作成するため、ユーザー像を明確にする必要があるのです。例えば、女性向けアクセサリーを販売している会社のカスタマーセンターであれば、性別=女性、年齢=20代〜40代、職業=会社員などの基本属性を設定します。
ペルソナをどこまで細かく設定するかは企業によって異なりますが、購買行動(どこで買ったか・いつ買ったか・購入頻度は多いかなど)や価値観など細かい項目まで埋めるのも有効です。そうすることで、問い合わせ内容が具体的にイメージでき、最適な回答例を考える際にもズレがなくなるでしょう。
ペルソナの持つ課題を想定する
具体的なペルソナが設定できたら、そのユーザーが持つ課題を想定します。課題や疑問を推測できれば、マニュアルに具体的な会話例や対処方法を落とし込めます。
女性向けアクセサリーであれば、「〇〇のようなデザインはあるか」「実店舗はどこにあるのか」「新作はいつでるのか」「旧作を購入する手段はあるか」「プレゼント用の包装はどのようなものか」など、ユーザー像に応じて疑問を先回りして考えます。
ビジネス向けのITツールであれば、「スペックや価格について詳細を知りたい」「基本的な操作方法が知りたい」「返品は可能か」「アップデートはどのようにするのか」など、問題や疑問を予測します。
またペルソナの課題をリスト化するときには、過去の問い合わせ履歴などから、よくある質問を収集することも大事です。
フローチャートを作成する
ペルソナ設定と課題の想定が終わったらフローチャートを作ります。フローチャートとは、対応方法を図で示したものです。顧客がこう答えたらこのステップに進むなど、手順を明確化したものを指します。図式化することで、テキストだけのマニュアルよりも分かりやすさが増します。
顧客の返答内容によって、次にすべき質問が決まります。手順通りに機械的に行うことで、顧客とのスムーズな会話が可能になるので、対応品質の平準化につながるのです。
なお、フローチャートは課題ごとに作成するのが一般的です。また対応方法が単純な課題については、FAQ方式の方が適しています。顧客の質問や抱えている課題に応じて、適切な方法を選択しましょう。
※関連記事
「電話対応マニュアルの基礎!受ける時と掛ける時にやるべきことを解説」
コールセンターの電話対応マニュアル運用の3つの注意点
ここでは電話対応マニュアルの運用における注意点を3つ紹介しましょう。
- 記載内容を定期的に見直す
- 検索性を高く設計する
- マニュアルだけに頼りすぎない
記載内容を定期的に見直す
電話対応マニュアルは定期的に見直し、アップデートを加えましょう。
マニュアルは、ビジネス環境の変化に加えて、自社商品・サービスの変化や顧客ニーズの変化など、さまざまな要因によって修正の必要性が生じます。
特に商品やサービスを新たにリリースしたときは顧客からの問い合わせが増えるものです。リリース前に最新の状態にしておくことで、スムーズな顧客対応が可能になります。
また顧客からの問い合わせが多いのにもかかわらず、マニュアルに反映されていなかった場合にも改善が必要になります。さらに、実際の現場の対応とマニュアル内容の間に齟齬がある場合には、現場担当者と相談の上、適宜文言やフローの追加・修正作業を行いましょう。
検索性を高く設計する
電話対応マニュアルを作成後に現場で活用されるように、検索性を高くするなど使い勝手についても気を配りましょう。マニュアルが見づらかったり使いづらかったりする場合には、現場で定着しないおそれがあります。特に、専用ツールの導入を考えている場合には、「使いやすさ=情報の検索性」について、しっかりと確認しましょう。
オペレーターがツールを使う際に、必要な情報にすぐにアクセスできない場合、自分の経験や持っている知識などで対応してしまう場合があります。または自分でメモや簡単なマニュアルを作って、対応するケースもあるでしょう。そうなると組織内の品質にバラツキがでたり、トラブルの発生原因になりかねません。
ツールを選定する際や自社でツールを構築する際には、キーワード検索機能、タグ機能、目次・索引機能の使い勝手を重視しましょう。設計の段階で、現場の担当者にヒアリングしながら進めるのが良いでしょう。
マニュアルだけに頼りすぎない
電話対応マニュアルにはさまざまな導入メリットがあります。一方で、マニュアルに頼りすぎるのは避けるべきでしょう。
状況によっては、柔軟な判断や対応が求められることもあります。その際に、マニュアル通りの対応しかできないと、顧客の怒りをかったり、不満につながるリスクがあります。
カスタマーセンターの役割は顧客の満足度を向上させることで、そのためには課題解決能力などの応用的なスキルも必要になるのです。これは従前からのトレーニングや上司からのフィードバックで鍛えることができます。
スキルアップにつながる教育を継続的に行うとともに、オペレーターが自発的に成長できる環境づくりも必要になるでしょう。
まとめ
今回は、コールセンターの立ち上げに伴い、マニュアルを作成することになった担当者に向けて、電話対応マニュアルの作成方法や運用の際の注意点などを解説してきました。
コールセンターの多くは「品質」や「採用・教育」面で課題を抱えています。電話対応マニュアルを整備することで、この2つの課題を解決できる可能性があるのです。
新たに電話対応マニュアルを作成することになった担当者にとっては、作成方法に加えて、マニュアルの定着化も推進しなければなりません。重要なのは、情報のアップデートと検索性です。ただし、マニュアル通りの杓子定規な対応では顧客満足度の向上が難しい場合もあります。
使いやすいマニュアルの整備を進めると同時に、柔軟な判断や対応ができるように、オペレーターを教育したり、スキルアップが目指せる環境を作ることも大事です。
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