「ロープレを導入する目的やメリットが知りたい」
「ロープレを効率的に実施して、成果につなげたい」
と考えているビジネスパーソンは多いのではないでしょうか?
ロープレをうまく活用できれば短期間でのスキルアップも可能です。自分の能力や課題を可視化できるため、成長につなげられるというメリットもあります。ロープレの腕を上げて成果を出せれば、上司からの高評価にもつながるでしょう。
そこで今回はロープレの意味をはじめ、導入メリット・デメリット、実践方法やポイントなどを網羅的に解説していきます。ロープレに馴染みのない新入社員はもちろん、ロープレの質をさらに向上させたい中堅社員にも有益な情報となっているので、ぜひ一読ください。
ロープレとは現場で経験する場面を想定して実施するもの
ロープレとはロールプレイング(Roll Playing=役割を演じること)を略した用語です。ビジネスシーンでは、営業や接客で経験する場面を想定して実施するトレーニングを指します。
ロープレは新入社員や新しく配属された人材のスキルアップを目的に行われる手法として注目されています。ロープレを導入することで、短期間で即戦力に育てることができるとされています。
実際の現場を想定してトレーニングを行うことで、実践力や対応力が身につき、成果に直結するスキルが習得できます。ロープレを導入することでチーム全体のスキルの平準化につながるため、組織力の向上も期待できるのです。
ロープレの4つのメリット
ロープレは業種・職種を問わずさまざまな組織で取り入れられている手法です。採用されている理由は、活用することで次の4つのメリットが期待できるからです。以下、詳細について、解説していきましょう。
- 効率的にスキルを習得できる
- 自分の課題が見えやすい
- トークに慣れることができる
- 成功者の手法を学べる
効率的にスキルを習得できる
ロープレは通常、少人数で行います。そのため、多数を対象にした研修やセミナーなどに比べて、ピンポイントで必要なスキルを習得できるというメリットがあります。
ロープレでは、成果を出しやすい営業トーク、直面しやすい課題と解決策、トラブルへの対処方法、クライアントの特性に合わせた営業・接客手法など、より実践的なシチュエーションを想定して、最短距離でスキルを錬磨できます。
一方、実践的な能力を習得する研修方法にOJT(On-the-Job Training)を採用している組織も多いでしょう。OJTは職場で先輩社員などについて業務の知識ややり方を学ぶ手法で、セミナーなどのOff-JTよりも実践的なスキルが学べるとされています。
しかしOJTは、先輩社員の仕事をみて覚えるという側面が強いため、目的やゴールが適切に設定されない場合には経験のみが蓄積され、必要なスキルが習得できないというおそれもあります。
ロープレには、会社全体として短期間で社員を戦力化できるというメリットがあり、同時に教える側・教わる側双方の業務負担軽減も期待できるのです。
自分の課題が見えやすい
ロープレは具体的な場面を想定して、社員個々人が実演するため、スキルや知識などの課題が可視化されやすいという特徴があります。
セミナーや研修、eラーニングなどの社員研修は体系的な知識を学べるという利点があります。ただし、社員のスキルや知識は人それぞれです。経験値や得手不得手も異なります。研修を受けたからといって、個別の課題が可視化されるというわけではありません。
そうしたOff-JTの課題を解決するためにロープレが有効になります。ロープレのように特定の場面を模擬的に経験することで、その人の課題や欠点が見えてきます。
同僚や上司を相手に営業や接客を行うことで、自分の課題が見えてくるため、改善策を講じることで成長につなげられます。
自分自身だけではなく、相手役や参加者など第三者からのフィードバックももらえるため、多角的な視点で課題を発見できるというメリットもあります。
トークに慣れることができる
ロープレによって営業や接客の場数を踏めるため、トークに慣れることができます。
特に社歴の浅い人や営業・接客に苦手意識をもっている人は、ロープレによって経験値を積むことで課題の克服につなげられるでしょう。
また、トークに慣れることで自分の長所・短所も把握できるようになります。長所を活かし、短所を改善することでトーク力の向上が期待できます。営業担当者であれば受注や契約の継続につなげられ、店舗スタッフであれば来店客への適切な提案が可能になり、売上に貢献できるでしょう。
これまでみてきたように、座学では経験値を積むことができないため、ロープレのような模擬的な場面を経験することが重要になるのです。
成功者の手法を学べる
営業成績の良い社員のロープレを参考にすることで、成功者の手法を学べるというメリットもあります。
組織力の向上のためには、各人員の能力を高める必要があります。ベテラン社員や能力の高い一部の社員が有しているノウハウやスキルをチーム内で共有できれば、組織のパフォーマンスアップにつなげられるでしょう。
そのための手法として、ロープレが有効です。営業手法に悩んでいる人や成績が伸び悩んでいる社員が成功者のトークスクリプトや接客対応を習得できれば、成績アップによって自信にもつながるため、ポジティブなマインドが醸成されるといったメリットも期待できるでしょう。
ロープレの3つのデメリット
ロープレは社員のスキル向上に効果的な手法ですが、運用方法を間違うと逆効果の場合もあります。ここでは、ロープレ導入によって考えられるデメリットを3つ紹介します。
- 習慣化しすぎると効果が薄まる
- 相手によっては効果が薄まる
- ロープレの実施自体に時間がかかる
習慣化しすぎると効果が薄まる
ロープレは習慣化すると、思ったような効果が得られなくなるおそれがあります。特に、毎日同じような内容で繰り返すと形骸化するため、新たな課題が見つけにくくなります。
ロープレの参加者や設定する課題、想定する顧客など、いつも同じ場合にはトーク内容や提案する商品なども代わり映えしなくなります。
ロープレは社員の成長につなげなくては意味がありません。社員は課題を可視化し、それを改善することで成長します。気づきや学びが得られないロープレが続くと、教える側と教わる側双方にとって時間の無駄になるおそれがあります。
ロープレを行う時には、常に課題を見つけ、解決策を模索するといった姿勢が重要になります。
相手によっては効果が薄まる
仲の良い同僚やいつも同じ相手にロープレを行っていると、緊張感がなくなるため効果が薄まるおそれがあります。
ロープレは、実際の営業現場や接客シーンを想定して行います。クライアントへの提案や顧客への接客は緊張を伴うものです。そのため弛緩した空気の中でロープレを実施しても、実践力が養えません。私語が多かったり、馴れ合いの雰囲気がでる場合には、参加者を変更するなどして改善しましょう。
ロープレの実施自体に時間がかかる
ロープレを実施するためには、シナリオを作成したり、実施後のフィードバック面談を実施するなど、時間がかかるというデメリットがあります。
博報堂が2023年1月に実施した調査によると、商談スキルにロープレが「有用・効果的」と答えた割合が77.2%にのぼりました。一方、実施するには「時間的な制約」などに課題を感じていると答えた人の割合が50%以上を占めました(下図参照)。


(出典:博報堂gmove、ITで営業スタッフの商談品質を向上させる接客ロールプレイングサービスを提供開始|PR TIMES)
同調査では、「Q.ロープレを行っていく上で課題と感じることはなんですか?(いくつでも)」という設問に対してもっとも多かった回答が「時間的な制約がある(53.5%)」でした。次いで、「忙しい時間内での双方の心理的な不安(46.5%)」という結果になりました。
ロープレを導入し継続的に実施するためには、効率的に行える仕組みを構築するなど、環境を整備する必要があるでしょう。
ロープレの実施方法
ロープレを導入する場合、次の3つの手順で進めます。
- 役割を設定する
- 場面を設定する
- ロープレを実施しFBを行う
各工程について詳細を解説していきます。
役割を設定する
最初に役割を設定します。参加者は大別すると、次の三役です。
- 営業役・販売役
- 顧客役
- オブザーバー役
営業役や販売役は、営業手法や販売手法を教わる側で、スキルアップを目指す人材になります。顧客側は、上司や先輩社員、同僚などが担います。
オブザーバー役は立会人や傍聴者と呼ばれる人です。ロープレを第三者的な視点で観察し、後から感想やフィードバックを述べます。
ロープレを実演する社員にとって、オブザーバーが監視することで緊張感が生まれ、より実践に近い雰囲気が作り出せます。
場面を設定する
次に、ロープレの場面を設定します。教わる側がどのようなスキルを身につけたいかによって、シナリオが変わります。
営業職の場合には次のような点を意識して、場面を設定します。
- BtoB または BtoC
- 新規顧客 または 既存顧客
- 現場担当者 または 役員レベル
- 顧客の課題やニーズは何か
販売職であれば、新規か常連か、ニーズは何かなどを設定します。また最終的なゴール(契約、リピート、オンラインショップでの購入など)も設定しましょう。
ロープレを実施しFBを行う
設定したシチュエーションをもとに、ロープレを実施し、フィードバックを行います。
フィードバックは、目線や口調、声の大きさ、姿勢、表情など、良かった点と悪かった点を伝えます。またクロージングに至る手順に強引さがなかったか、提案商品にズレはなかったかなど、オブザーバーが気がついた点を指摘します。
ロープレを効果的に行う3つのポイント
ロープレのメリット・デメリットや具体的な実践方法を押さえた上で、次の3つのポイントについても意識しましょう。
- いつも組む相手を変える
- 良い点・悪い点両方でFBをもらう
- できれば録画をしておく
いつも組む相手を変える
ロープレを行う相手は定期的に変更しましょう。いつも同じ相手の場合には、緊張感の緩みが起こることはもちろん、指摘内容が偏る可能性もあります。また、ロープレ相手が自分と似たようなスキルをもっていたり、社歴が同じような場合には、フィードバックのレベルにも限界がでてきます。
ロープレ相手として、上司や先輩などに協力してもらうことで、より高い視点からの改善策を提案してもらえます。特に成果をあげている人材からはより実践的な営業スキルを学べます。
例えばアイスブレイクや雑談の振り方などを学ぶことで、顧客とのコミュニケーション促進の方法を学べたり、顧客からの難しい提案への対処方法など、座学では学べないような内容も習得できるようになります。
良い点・悪い点両方でFBをもらう
フィードバックは良い点と悪い点の両方とも重要です。良い点を指摘してもらうことで、教わる側はモチベーションがアップします。ロープレは緊張感をもって実施するため、人によってはストレスになります。次回以降も、積極的にロープレを行いたいと思えるように、褒めるということも重要になります。
一方、悪い点もしっかりと指摘する必要があります。仕草や言葉遣いのクセは、なかなか自分自身では気がつかないものです。他者からの指摘によって、はじめて気がつくケースが多いでしょう。悪癖や口癖が失注につながっているケースもあります。
若手社員の場合、悪い点を改善することで大きく成長する可能性もあるので、相手が気分を害さない言い方を工夫しつつ指摘しましょう。
できれば録画をしておく
録画が可能ならば動画を撮って、後から振り返りましょう。ロープレは自分自身での気づきと相手からの客観的な指摘によって課題を探る手法です。自分で自分を客観的に観察するためには、動画を視聴するのがもっとも効率的です。
自分ではうまくやれているつもりでも、動画で確認したら想像と異なっていたというケースもあります。動画でチェックすることで、相手からの指摘や提案も納得できるようになるでしょう。
また成果を出している社員の動画をチーム内で共有することで、他の社員のスキルアップにもつながります。ロープレの動画をナレッジとして蓄積し、共有・活用するための仕組み作りに着手してみても良いでしょう。
まとめ
今回は、社員のスキルアップに効果的な「ロープレ」について解説しました。ロープレはOff-JTやOJTでは習得できない、実践的なスキルが身につく教育手法です。
営業経験の少ない社員や新たに異動してきた社員が、ロープレによって効率的にスキルを学べ、自分自身を客観視することで成長につなげられます。また先輩社員のノウハウや手法を学ぶための最適な機会でもあります。チーム内でハイパフォーマーのトークスクリプトや接客技術を共有すれば、組織力の向上にも寄与するでしょう。
商談スキルの向上は組織の成長のために必要不可欠です。ここで紹介したメリット・デメリットやポイント、具体的な実施方法を参考にロープレを導入してみてはいかがでしょうか。