「最近部下の様子がおかしい……」「部下のメンタル不調はどうすれば解決できるのだろう」「不調を見つけるためのサインはあるのだろうか」
など、チームをマネジメントする上司にとって、部下のメンタルヘルス対策は不可欠です。
部下のメンタル不調を放置するとチーム全体のパフォーマンス低下やうつ病の発症など、大きな問題に発展する危険性があります。そのため、上司はなるべくはやく部下の異変を把握し、対処することが求められているのです。
そこで今回はメンタル不調の主な原因を紹介し、早めのケアがなぜ必要なのかも解説します。また部下のメンタル不調のサインや上司が取るべき具体的な対処法も取り上げます。最近、部下のメンタル不調が気になっているという方はぜひこの記事を読み、対処法を学んでください。
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メンタル不調の原因になりやすい事柄TOP5
働き方改革の推進やメンタルヘルス対策の実施などにより、多くの企業は従業員の「心の健康」に配慮した取り組みに注力しているでしょう。しかし、さまざまな理由によって、メンタル不調に陥ってしまう人はまだまだ多いのが現状です。
令和4年度(2022年度)の「過労死等の労災補償状況」によると精神障害に関する事案の労災補償状況は、請求件数ベースで2,683件でした。これは前年度比337件の増加です。同じく、支給決定件数は710件で前年度比81件の増加でした。どちらも前年よりも増えているのです。
決定および支給決定に至った理由の上位5つは次の通りです。
順位 | 具体的な出来事 | 決定件数 |
1位 | 上司とのトラブル | 475件 |
2位 | パワーハラスメント | 257件 |
3位 | 業務内容の変化 | 177件 |
4位 | 同僚等からの嫌がらせ | 148件 |
5位 | 同僚とのトラブル | 107件 |
※ただし「事故や災害の体験」を除く。「仕事」での一般的な症状とは異なるため
仕事そのものから受けるストレスの他に、上司や同僚などの人間関係がメンタル不調の原因となっていることが分かります。
以下、「上司とのトラブル」「パワーハラスメント」「業務内容の変化」「同僚等からの嫌がらせ」「同僚とのトラブル」の5つに絞って、メンタルヘルス不調の原因を深掘りしていきましょう。
上司とのトラブル
上司とのトラブルにより精神的にストレスがかかってしまうケースが第1位でした。
部下にとっては、立場が上の上司とのトラブルは大きなストレスになるでしょう。上司とうまくコミュニケーションが取れなかったり、不公平な評価制度などが原因として考えられます。
また次に紹介するように、優越的な立場を利用した横柄な態度や言動もトラブルの原因になり得るでしょう。
パワーハラスメント
第2位は、パワーハラスメントによりメンタルに不調を抱えるケースでした。
パワーハラスメント(パワハラ)とは、厚労省が運営するサイト「明るい職場応援団」によると次のように定義されています。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる
- 優越的な関係を背景とした言動であって、
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
- 労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
(引用:「ハラスメント基本情報」ハラスメントの定義|厚生労働省「明るい職場応援団」)
パワハラは部下にとって大きなストレスにつながります。やる気がなくなるのはもちろん、精神的な不調に陥る可能性が高まるでしょう。チーム内の雰囲気も悪くなり、生産性の低下にも影響を与えます。風通しが悪くなることで、コミュニケーション不全に陥る危険性もあります。
業務内容の変化
第3位は「業務内容の変化」による精神障害となりました。。
これまでに経験のないほど大きなプロジェクトに回されたり、達成困難なノルマを課された場合にもストレスが原因のメンタル不調につながるリスクがあります。
さらに、経験やスキルが生かせない業務に回されることで、ストレスを感じることもあるでしょう。人によっては、自信喪失につながったり、キャリアの否定と考えてしまうケースもあるでしょう。
また過重労働によって、残業時間が増えると心身に影響が出てきます。ワーク・ライフ・バランスが崩れることで、プライベートの時間が取れなくなると、ストレスが蓄積します。結果的にメンタルヘルスの不調につながるのです。
同僚等からの嫌がらせ
第4位は、「同僚等からの嫌がらせ」です。
職場の同僚と良好な関係を築けない場合には、大きなストレスを感じるでしょう。とくに社内でのいじめや暴力は早期に解決する必要があります。
上司の立場から、部下たちの行動や言動を監視し、不適切な行為はすぐに改善するように行動を起こしましょう。
同僚とのトラブル
第5位は「同僚とのトラブル」です。
いじめに限らず、不仲によってストレスを感じ、メンタル不調に陥るケースもあるでしょう。仕事以外のことがらにエネルギーを取られるため、業務のパフォーマンスが低下する可能性もあります。
上司はチームマネジメントにおいて、部下同士の関係性も管理する必要があるでしょう。チームでのコミュニケーション強化の施策や仕組みを導入したり、個別面談を実施することで、トラブルの芽を早期に摘むことが重要になります。
部下のメンタル不調は早めにケアしよう
上司は部下のメンタルヘルスについて、これまで以上に気にかけておく必要があります。その理由として次の2点が挙げられます。
- 放置するとチームの生産性が低下する
- 最悪の場合うつ病などに発展してしまう
放置するとチームの生産性が低下する
部下のメンタル不調を放置し続けると、チームの生産性に悪影響を及ぼします。メンタルに問題を抱えている部下は、仕事への集中力が低下し、ミスが増える可能性があります。商談の日程を失念したり、納期が遅れたりすることも考えられるでしょう。
結果的に、プロジェクトの進行や商品・サービスの品質にも悪影響を与えることになるのです。影響範囲がチーム全体や会社全体にまで広がるリスクがあるため、早期に対処する必要があります。
最悪の場合うつ病などに発展してしまう
部下のメンタル不調が長期化することで、最悪の場合、うつ病に発展してしまうリスクもあります。うつ病になると、長期間の休職や離職につながるため、組織として大きな損失になります。
また周囲のメンバーや職場全体に影響を及ぼす可能性も考えられます。例えば、必要な人員を他チームから補充することで、他チームのプロジェクトが遅延するかもしれません。また新たな人材を獲得する際の採用コストや教育コストが発生することもあります。
問題が大きくなる前に、メンタル不調の予兆が見られる部下には早期の対処が必要になります。常日頃から密にコミュニケーションを取ったり、職場全体の就業環境や働き方改革の推進などが求められます。
部下のメンタルが不調を見つける6つのサイン
では、どのように部下のメンタル不調を発見すれば良いのでしょうか。ここでは代表的な6つのサインを紹介していきましょう。
- 遅刻や欠勤が増えてきた
- ミスが増えてきた
- 残業時間が増加してきた
- 仕事への意欲を感じられなくなっている
- 身だしなみが乱れ始めた
- 挨拶をしなくなった
遅刻や欠勤が増えてきた
遅刻や欠勤が急に増えた場合は、注意が必要です。また早退が増えたり、頻繁に有給休暇を取得しているケースも、メンタル不調を疑った方がいいかもしれません。
精神的にトラブルを抱えている人は、朝起きられなかったり、身支度に手間取るなど、定刻通りに出勤できないケースが考えられます。また急に会社に行けなくなったり、通院などで休みがちな場合にも、上司は目を光らせる必要があるでしょう。
ミスが増えてきた
ミスが増えてきた場合には疲労が蓄積していたり、業務に対して不満を抱えている可能性があります。それが理由でメンタル不調を引き起こしていることもあるでしょう。
例えば、ミーティングや商談の日時、納期や〆切りを失念するなど、通常はあまり考えられないミスが頻発する場合には、部下のメンタル不調を疑いましょう。
残業時間が増加してきた
業務の質や量が変わっていないのにも関わらず、残業時間が増えている場合も、メンタル不調の予兆が隠されているかもしれません。
悩みがあったり、心身に疲れがたまっていて、仕事が手につかない人もいるでしょう。普段よりも長い時間がかかっていたり、依頼した仕事が終わらないなどのケースでは上司が積極的に声をかけた方が良いでしょう。
仕事への意欲を感じられなくなっている
仕事への意欲が感じられない場合も、原因がメンタルにあるかもしれません。例えば、会議での発言が少なくなったり、イベントや任意参加のミーティングを欠席がちになったりすることが考えられます。
意欲ややる気が減退していることで、後輩社員や同僚に対しても、興味を失っているケースもあります。これまで積極的だった部下が、急に周りをサポートしなくなったり、会話をしなくなった場合はメンタル不調を疑っても良いでしょう。
また発言や言動の内容が変化しているケースも注視すべきでしょう。ネガティブな発言や投げやりな発言が増えている部下も、何か問題を抱えている可能性があるので注意しましょう。
身だしなみが乱れ始めた
髪の毛や服装などの身だしなみが乱れ始めている場合も、メンタル不調のサインといえます。
深刻な悩みを持っている場合には、身だしなみまで気にかけられないものです。部下の髪の毛や髭、メイク、スーツ、靴、鞄などが、普段と違って清潔さを欠いている場合には、一度声をかけてみるのが得策です。
挨拶をしなくなった
いつも元気に挨拶をしていた部下が、挨拶をしなくなったら危険信号です。呼びかけに対して応えなかったり、あからさまに他者を避けている場合も、メンタル不調の予兆と考えていいでしょう。
他にも、同僚との会話を避けていたり、一人で行動することが増えている場合も、メンタル不調のサインとして気にかける必要があります。
部下のメンタルが不調だと思ったらやるべき対処法
部下のメンタル不調は、チーム全体へも波及するおそれがあります。そのため早期の対処を検討しましょう。具体的な対処法は、次の2つです。
- コミュニケーションを十分に行う
- 医師やカウンセラーを勧める
コミュニケーションを十分に行う
部下がどのような問題に直面しているのかを確認するためにも、コミュニケーションを強化しましょう。
具体的には、1on1ミーティングの開催が有効です。仕事以外の雑多な話題を気軽に話すことで、部下の悩みや不安を聞き出すことができるでしょう。また上司と部下が信頼関係を築くための手法としても効果的です。
コミュニケーションを取るときには、傾聴することが基本スタンスです。無理やり話を聞き出したり、問い詰めたりするのはNGです。常日頃のコミュニケーション促進を心がけ、相手に心を開いてもらうスタンスを大事にしましょう。
医師やカウンセラーを勧める
メンタル不調の原因が分からない場合には、第三者の助けを借りましょう。例えば、社内の産業保健スタッフや外部の専門医、カウンセラーなどに相談してみましょう。
メンタル不調の原因が分からず、とりあえず業務内容を変えたり、時短勤務に変更したりしても問題が解消しないケースが考えられます。さらに、業務の変更や配置転換が部下の精神的な負担を増大させるリスクもあるでしょう。
メンタルヘルスは、原因の特定が難しく複雑なケースも多いことから、下手なことはせず専門家に委ねるのが得策といえるでしょう。
まとめ
今回は、部下のメンタル不調を見つける6つのサインを中心に紹介しました。また、メンタル不調の主な原因や早めのケアが必要な理由、2つの具体的な対処法も解説しました。
上司は部下の仕事ぶりを管理するだけでなく、心身の健康の維持・増進も気にかける必要があります。部下が心身ともに健康で、意欲的に働ければ個人のパフォーマンスだけでなく、チームのパフォーマンス向上にも寄与します。
メンバー全員がポジティブなマインドで働ければ、人員の定着にもつながるはずです。結果的に、組織の持続的な成長にも貢献するのです。
もし部下が、ここで紹介したようなサインを見せていたら、すぐに対処しましょう。部下のメンタル不調を把握するためには日頃からのコミュニケーションの促進が重要になります。ただし、上司だけでは問題を解決できない場合も多々あるでしょう。その際には産業医や医師、カウンセラーなど外部の専門家の手を借りることも重要です。