最終更新 2023年4月4日

ペルソナ設定とは?3つのメリットと実践の3ステップについても解説

「ペルソナ設定とは具体的にどんなことなのかわからない」
「ペルソナ設定のメリットや注意点が知りたい」
「プレゼンや企画書のためにペルソナ設定を実践したい」
このような悩みを持つビジネスパーソンは多いでしょう。ペルソナをうまく活用すれば、チーム内でイメージを共有できるため組織全体のパフォーマンスアップにつながります。またユーザー視点に基づいた商品・サービスの開発や提案が行えるため、売上にも直結し顧客満足度の向上も期待できるのです。

そこで今回は、ペルソナ設定の基本から、活用メリット、実践方法、注意点までを網羅的に解説していきます。ペルソナ設定を効果的に取り入れて成果を上げたいビジネスパーソンにとって必読の内容となっているのでぜひ参考にしてください。

ペルソナ設定の基礎知識

マーケティング用語としてよく耳にする「ペルソナ」。ペルソナ設定はマーケティング担当者だけでなく、営業や商品開発など他部門のビジネスパーソンが企画書を作成する時などにも有効な手法です。

まずは、ペルソナという言葉は聞いたことがあるものの詳しいことまでは分からないという人に向けて、基礎知識を解説していきましょう。

ペルソナとは商品やサービスを使用する顧客像のこと

ペルソナ(Persona)は元々は「仮面」という意味ですが、ビジネスシーンで使用する場合には、「自社の商品・サービスを使用する架空の顧客像」のことを指します。

ペルソナを設定することで、「商品開発時における顧客ニーズの分析」「潜在顧客に対するマーケティング戦略の立案」「カスタマージャーニーの作成」などに役立ちます。
ペルソナ設定では、年齢、性別、職業、収入などの基本情報に加え、趣味嗜好、休日の過ごし方、愛用しているブランド、価値観、悩みなど、より具体的な行動・思考まで踏み込んで、特定の個人をイメージします。そうすることで、商品・サービスを購入する消費者像が明確になり、ユーザー視点のビジネス戦略が描けるといった利点があるのです。

ターゲットとペルソナの違い

ペルソナと似たキーワードに「ターゲット」があります。両者の違いは、「イメージの詳細さ」「個人/集団」「架空/実在」の3点です。

ペルソナは、価値観や行動パターンまで踏み込んでユーザー像を設定します。一方で、ターゲットは、「性別」「年齢」「居住地」などの基本属性のみで分類したユーザー層を指します。前者の方がより細密な顧客像を設定します。

またペルソナが商品・サービスを使用する特定の個人をイメージするのに対して、ターゲットは上述したような属性などでセグメントした集団のことです。

さらにペルソナは架空のユーザーを設定するのが一般的ですが、ターゲットは商品・サービスを使用している実在するユーザー層を指します。

以上の3点を表にまとめたものが下表です。

ペルソナとターゲットの違い

ペルソナターゲット
詳細にイメージする(基本属性に加えて、価値観や行動パターンまで設定する)属性でセグメントする(性別、年齢、居住地などの基本属性のみで設定する)
具体的な「個人」を想定ペルソナを含む「集団」を想定
「架空」のユーザー像「実在」の顧客層

ペルソナ設定の項目の例

ここではペルソナ設定の際に入れる項目例を紹介します。マーケティング戦略はもちろん、営業部門など他部門で企画書を作成する時にも使えるので、ぜひ参考にしてみてください。

<項目例>

  • 名前
  • 年齢
  • 職業・役職
  • 性別
  • 居住地
  • 年収
  • 学歴
  • 趣味
  • 家族構成
  • 通勤時間
  • 交友関係
  • 1日のスケジュール(平日)
  • 休日の過ごし方
  • 愛用しているブランド
  • 使用しているスマートフォン
  • 利用しているSNS
  • よく観る動画・YouTube
  • 登録しているサブスクサービス
  • 情報収集の手段
  • 悩み
  • 詳細の夢

また、BtoBの場合には上記に加えて、次の項目も必要になります。

<項目例(BtoB)>

(企業)

  • 社名
  • 業種
  • 所在地
  • 従業員数
  • 事業内容
  • 売上高
  • 社風

(個人)

  • 所属部署
  • 役職
  • 勤続年数
  • 決裁権
  • ビジネス課題

ペルソナ設定の3つのメリット

ここではペルソナを設定することで得られるメリットについて、次の3つを紹介します。

  • 具体的な人物像をチーム内で共有できる
  • ユーザーへの理解が深まる
  • 商品やサービスの改善がしやすくなる

具体的な人物像をチーム内で共有できる

マーケティング施策を考える時や商品開発などの際に、具体的なユーザー像をチーム内で共有できるメリットがあります。
プロジェクトチームにはさまざまな年齢や性別、経歴や価値観をもったメンバーが属しています。例えば、新商品のデジタルガジェットを訴求したいターゲット層を「男性/30代/大手IT会社勤務」と設定した場合でも、メンバーによってどのような人物像をイメージするかは異なるでしょう。

30代でIT会社勤務だからといって、ITリテラシーが高いとは限りません。また、男性の中にもデジタルガジェットに興味がない人は多いでしょう。

こうした先入観や思い込みによって、チーム内でイメージがズレてしまうと、打ち合わせ時や施策を考える際に足並みが揃いません。提案の方向性がバラバラになり、チームとしてのまとまりにかけます。

ペルソナを設定することで、趣味嗜好や興味関心領域が明確になります。使用しているデバイスや普段閲覧しているWebサイト、どのようなモノやサービスにお金をかけるかなどが詳細に分かれば、顧客の具体的なイメージが固まるでしょう。その結果、チーム内で顧客像が共有でき、認識のズレを最小限にできるのです。

ユーザーへの理解が深まる

ペルソナを設定する過程で、顧客視点でものごとを考えるようになるため、ユーザーへの理解が深まります。

商品開発や顧客への提案営業を行う際、商品・サービス起点でものごとを考えると、ユーザーのニーズや要望を満たせないケースがあります。自社サービスの機能がいくら豊富でも、ユーザーが求めているのは機能性ではなく価格の場合には、購入や契約につながらないでしょう。

ペルソナを設定する中で、ユーザーが直面している課題を明確化でき、ユーザーが意思決定する時にどの要素(機能、価格、利便性など)を重視しているかが分かるようになります。

商品やサービスの改善がしやすくなる

ペルソナの設定によって、商品・サービスの改善が行いやすくなるというメリットもあります。

商品やサービスをリリースした後に、売上が伸びなかった場合、ペルソナに設定したユーザーのニーズや課題に合っているかチェックします。

仮に、商品やサービスの特性とユーザーニーズに乖離がある場合には、ズレを埋めるための改善策を講じてより良い商品・サービスに作り上げていきます。

その際にペルソナが明確であれば、一から方向性を考えたりメンバー間で認識をすり合わせるための時間を削減できます。そのため、市場ニーズに即応したスピーディーな施策が打てるようになるでしょう。

ペルソナ設定の実践方法3ステップ

ペルソナの設定は企画書を作る際などにも有効なので、職種を問わず習得しておきたい手法です。ここでは3つのステップで、誰でも簡単に理解できる実践方法を解説していきましょう。一般的なフローは、次の3つです。

  1. 必要な情報を集める
  2. アウトラインを作成する
  3. ペルソナシートを作る

必要な情報を集める

まずは情報収集です。効率的なリサーチ方法は次の3つです。

  • 既存顧客へのアンケート・インタビュー
  • 自社の社員へのアンケート・インタビュー
  • ネットを活用して口コミなどを集める

既存顧客に対して、「自社商品・サービスの魅力」「購入した動機」「どのような経路で購入したか(タッチポイント)」「購入を決めるまでの期間」「比較した競合他社の商品・サービス」「直面していた課題や悩み」などをヒアリングして、情報を収集します。

既存ユーザーから、属性をはじめ、購買行動のパターンや価値観、ライフスタイルなど、多岐にわたる情報を集めることで、より細かいペルソナ設定が可能になるのです。

また顧客との接点が多い自社の営業担当者やカスタマーセンターの担当者などに話を聞くことでも情報を集められます。既存顧客からの生の声をはじめ、購買や契約に至らなかったユーザーからの意見なども、商品開発やマーケティング施策に活かせるでしょう。

他にもSNSで自社商品・サービスに言及しているユーザーのプロフィールなどを確認するのも有効なリサーチ手法です。

アウトラインを作成する

十分な情報を収集した後は、下記の項目にそってセグメンテーション(分類・整理)していきます。

  • デモグラフィック……性別、年齢、職業、家族構成など
  • サイコグラフィック……価値観、趣味嗜好、宗教、興味関心など
  • ジオグラフィック……居住地、会社所在地など
  • ビヘイビアル……購入履歴(商品名、頻度、金額、場所、タッチポイント)、情報収集の方法など

情報を属性でセグメンテーションすることで、価値観やライフスタイルなど、架空の顧客像の輪郭が見えてきます。整理した情報をもとにペルソナの特徴を箇条書きして大まかなアウトラインを作成すると、次ステップのペルソナシートを作る時に役立つでしょう。

ペルソナシートを作る

最後にペルソナシートを作成します。ペルソナシートとは、ペルソナの属性やイメージをまとめた一覧表のことで、通常は一枚の書類にまとめます。

名前、年齢、性別、職業、年収、家族構成、趣味、興味関心、悩みなどを一覧にして、顔写真などのイメージ画像も入れます。BtoB領域であれば、所属企業の業種・職種・役職・決裁権の有無・ビジネス課題などもまとめます。

またそのペルソナの価値観や購買行動が分かるようなストーリーをコメントとして入れることで、人物像がリアルになり、チーム内でのイメージの共有が促進されます。

なお、ペルソナシートはネットからテンプレートを入手可能です。自社で統一のフォーマットがなく、一から作成するのが難しいという場合にはすでに完成しているテンプレートを入手し、自社用にカスタマイズする方法も検討してみましょう。

ペルソナ設定の3つの注意点

ビジネスのさまざまなシーンでペルソナ設定は効果を発揮しますが、やり方を間違えると思ったような成果を得られないかもしれません。そこで失敗を避けるために知っておきたい注意点を3つ解説します。

  • 「理想像」で設定しない
  • 客観的情報を見て設定する
  • 定期的にアップデートする

「理想像」で設定しない

ペルソナは自社が考える理想的な顧客ではなく、実際に存在しうる典型的な顧客像を設定します。商品開発の担当者や営業担当者、マーケティング担当者などが、自分たちにとって都合の良いペルソナを設定すると、顧客ニーズを見誤る可能性があるので注意しましょう。

上記の実践方法でも解説したように、ペルソナ設定の際には入念な情報収集を行います。ここで収集した属性や行動履歴などを使いデータドリブンな分析を行うことが重要です。

客観的情報を見て設定する

ペルソナは収集した情報をもとに、客観的な人物像を設定しましょう。上で説明したような「理想像」はもちろん、主観的な考え方に基づいた顧客像をつくると、情報収集した意味がなくなります。

ペルソナシートを作る際も、思い込みや主観に基づいた判断は排除しましょう。例えば、ITツールのユーザー像を設定する際に、「ベンチャー企業所属だからデジタルに詳しい」「50代女性だからデジタルツールに興味がない」「IT企業だからツールの導入に積極的」などという紋切り型の分析は行わず、あくまでも収集したデータをもとにペルソナを作り上げましょう。

定期的にアップデートする

ペルソナは、市場環境が変われば変化します。また社会情勢や経済情勢によって価値観やライフスタイルが変わることもあり、消費行動も変容するでしょう。そのため定期的にペルソナをアップデートすることが大事です。

外部環境の変化だけでなく、自社がマーケティング施策を行ったあとに、思うように成果が得られない時などもアップデートや修正を実行しましょう。成果が出ない場合には設定したペルソナが間違っている可能性があります。

商品・サービスを必要としているユーザーを明確に設定し、その潜在顧客に届くようなアプローチ手法を立案することが大切です。そのためにも、実態に合ったペルソナを再構築する必要があるのです。

まとめ

今回は、ペルソナ設定についての基本的な知識に加え、実行することで得られる3つのメリット、実践手法、注意点などを網羅的に解説しました。

ペルソナ設定はマーケティング用語として普及していますが、商品開発はもちろん、営業担当者が企画書を作成する時などにも使える手法です。ペルソナを設定することで、チーム内で顧客像のイメージを共有でき、ユーザー視点でビジネスを考えられるといった利点があります。

ただし、理想や主観的な思い込みに基づいてペルソナを設定すると、ユーザーニーズを見誤る可能性があるので注意しましょう。あくまで収集した情報をもとに、客観的な視点から、典型的な顧客像を設定することが重要になります。

ここで紹介した3ステップの実践方法を参考に、ペルソナ設定を取り入れ、企画書の作成やマーケティング戦略に活かしてみてください。

Qiita Teamで情報共有をはじめよう