最終更新 2023年4月5日

効果的な引継書のテンプレートを公開!必要な6つの項目も解説

退職や部署異動などの際に必要になるのが、他の社員への業務の引き継ぎです。引き継ぎがうまくできないと、後任者の仕事の質やスピードが低下し、部内全体の生産性も下がるおそれがあります。そうならないためにも、引き継ぎ業務を行う人は分かりやすい引継書を作らなくてはなりません。

しかし、引き継ぎの経験があまりない社員の中には、効率的な引継書の作成方法が分からない人も多いでしょう。そこで今回は、引継書に必要な項目や実際の作成手順、活用できるテンプレート、作成のポイントなどを徹底解説していきます。はじめて引継書を作るという人にとって有益な内容となっているので、ぜひご一読ください。

分かりやすい引継書に必要な6つの項目

引継書は、転職や退職時に、前任者が後任者に仕事内容や手順などを伝達するために作成する書類です。また部署異動やプロジェクトからの離脱、育休・産休などの長期休暇に入る前などにも、引継書が必要になります。

引継書がないと、後任者はいつ・どのように業務を実施すれば良いのかが分かりません。後任者は必ずしもその業務に習熟しているわけではありません。また、場合によっては社歴の浅い社員が担当することもあるでしょう。そのため、引継書は誰にとっても分かりやすい書類でなければなりません。

特に、次の6つの項目については必ず記載しましょう。

  • 業務の目的などの概要
  • プロジェクトのスケジュール
  • 具体的な業務の流れ
  • 資料の保管場所
  • トラブルが起きたときの対応法
  • 業務の進捗状況

業務の目的などの概要

もっとも重要な項目として、業務の目的や全体像などの概要を記述します。「なぜこの業務を行うのか」「業務全体の中で果たす役割は何か」「他の業務とどのような関連性があるのか」について、後任者にしっかりと伝達しましょう。

目的や全体像などを知ることで、後任者は業務への理解度が深まります。引継書をもとに前任者からレクチャーを受ける際にも、より深く理解でき、自分なりに咀嚼しながら業務プロセスやフローを習得できるでしょう。また役割や意義を理解できれば、仕事への責任感や主体性が生まれることも期待できます。

全体像を示す際には、関係者や関係部署、取引先や協力スタッフなども記載する必要があります。そうすることで、当該業務の位置づけがより明瞭になり、後任者の理解が一層深まるでしょう。

プロジェクトのスケジュール

引き継ぐ業務やプロジェクトについて、スケジュールもまとめておきましょう。いつ・どのタイミングで実施すべきなのかを記載しておけば、業務の抜け漏れ防止に役立ちます。

また、日次・月次・年次などの頻度に加えて、優先順位についても記載します。例えば、他部署と連携する業務や取引先への連絡や納品が発生する業務の場合、タイミングが遅れたり漏れたりすると各所に大きな迷惑がかかります。業務の引き継ぎがうまくいっていないと判断されると、社内外からの信用の低下にもつながるので注意しましょう。

開始日(曜日・時間・時期)だけでなく、終了日(納期・〆切り)、承認プロセスなども記載することで、後任者はスムーズに業務を引き継ぐことができるでしょう。

具体的な業務の流れ

この項目では業務の流れや進め方について、具体的に記載します。引き継ぐ業務ごとに個別にまとめましょう。この項目は、引継書のなかでもっとも多くのボリュームを割くことになります。

記載する内容の例は次の通りです。

  • 業務の名称
  • 進め方
  • 使用するツールやシステム(ログインID・パスワードも記載する)
  • ポイント・注意点

多くの業務では、前任者が独自のやり方で仕事を進めていたり、イレギュラーな対応が発生しているケースがあります。また、作業効率向上のためのコツやノウハウなどもあるでしょう。そうした部分は「ポイント」として列記しておくと、後任者の作業効率や品質の維持・向上につなげられます。

なお、使用するツールやシステムの具体的な操作方法については、情報が過剰になるため、引継書に記載する必要はありません。細かい操作方法は、別途、社内で整備している「マニュアル」を確認してもらいましょう。

資料の保管場所

マニュアルを含む、各種資料(紙ベースおよびデータ)の保管場所をまとめましょう。業務によって異なりますが、必要な資料の例は次の通りです。

  • 各種ツール・システムのマニュアル
  • 顧客データ(連絡先・提案履歴など)
  • 書類データ(見積書・請求書・提案書・企画書など)

紙媒体の場合にはファイルの保管場所、データの場合には保存先のフォルダなどを指定します。またファイル名だけでなく、参照ページついても具体的に記載しておきましょう。

近年は、資料類をクラウド上でデータ管理している企業も増えています。例えば顧客データや提案資料の過去データをCRMやSFAなどで管理している場合には、必要なデータへのアクセス方法を示しておきましょう。

また、マニュアル類をクラウドストレージやナレッジ共有ツールで管理している場合、保存場所はもちろん、検索して探す際のタグやキーワードも明記しておくと、後任者にとって分かりやすいでしょう。

トラブルが起きたときの対応法

この項目では、トラブルが発生した時の対処方法や手段について記載します。過去のトラブルやイレギュラー対応の具体例と解決策を併記するのが効果的です。

またトラブルが起きた際に連絡する関係者の連絡先も一覧にしてまとめておきましょう。さらに、指示やアドバイスをしてくれる部署やキーパーソンの連絡先もあわせて記載しておくとより親切です。問題がなければ前任者の連絡先についても載せておきましょう。

業務の進捗状況

現在進行中の業務の進捗状況を共有しましょう。職を離れるまでに完了できなかった仕事の進捗や注意点、次のアクションなどを在職中にレクチャーしておくと、後任者の不安を軽減できます。

半期に1回発生する業務や年次業務などは、在任中に後任者と一緒に仕事をする機会がないケースも多いでしょう。その場合には、例えば、前倒しでできる部分を先に進めるなど、在職中にできる限りOJTで教える気配りも必要になります。

引継書作成の流れ

引継書のクオリティは、そのまま後任者の業務の質やスピードに関わってきます。分かりやすい引継書が作成できれば、後任者は滞りなく仕事を進められ、新任としての不安も軽減できるはずです。

ここでは、はじめて引継書を作成するビジネスパーソンのために、基本的な作成フローを解説していきましょう。具体的な手順は次の4つです。

  1. 記入するべき項目をリストアップする
  2. リストから伝えるべき項目をまとめる
  3. 上司や同僚にもヒアリングする
  4. テンプレートに沿って引き継ぎ書を作成する

記入するべき項目をリストアップする

まずは、引継書に記入する項目をリストアップします。自身が関わっている業務について、抜け漏れがないように洗い出しましょう。

リストアップする時に、一度ですべてを書き出すことができない場合もあります。そのため、日常業務を行うなかでリストから漏れている業務を見つけたら、都度項目出ししていくのが良いでしょう。

リストアップした後には、引継書の作成と実際の引き継ぎ業務のスケジューリングも必要になります。上司と相談し、後任者のスケジュールなども加味しながら、無理のない計画を立てましょう。

リストから伝えるべき項目をまとめる

引き継ぐ内容をリスト化したら、業務ごとに伝えるべき項目をまとめます。社内で引継書のフォーマットが統一されている場合には、必ずそれを使いましょう。項目ごとにフォーマットが異なっていると、後任者にとって分かりづらくなります。

また、場合によっては、後任者から次の担当者へ引き継ぐケースも想定されます。その際にも、決まったフォーマットを流用できれば必要な部分のみ加筆・修正すれば良いので、引継書の作成時間を軽減できます。

なお、先述のように、引継書に記載すべき基本の項目は次の通りです。

  • 業務の目的などの概要
  • プロジェクトのスケジュール
  • 具体的な業務の流れ
  • 資料の保管場所
  • トラブルが起きたときの対応法
  • 業務の進捗状況

業務によっては、不要な項目や追加すべき項目があるかもしれません。後任者の業務への理解度や習熟度を加味しつつ、柔軟に調整しましょう。

上司や同僚にもヒアリングする

業務のリスト化と各業務の項目出しが終わった段階で、一度上司や同僚と打ち合わせを行いましょう。自分一人で引継書を作成しようとすると、業務や項目の抜け漏れが発生する可能性があります。

業務の全体像を把握している上司や現場で一緒に働いている同僚にヒアリングをすることで、より網羅的な引継書が作成できます。

テンプレートに沿って引継書を作成する

最後に、テンプレートを使って引継書を作成していきます。テンプレートは社内や部内で統一されているものがあればそれを使います。もしテンプレートがない場合には、上司や同僚に相談してみましょう。別の人が使っていた見やすいフォーマットがあれば、流用するのも一つの手です。

引継書は、一度全体を作成した後に何度か推敲を重ねる必要があります。分かりづらい記述や誤字脱字を修正し、ある程度まとまったら周りの人に確認してもらうなどして精度を高めていきましょう。

おすすめの引継書テンプレート

引継書の作成にはテンプレートの活用がおすすめです。ここでは、ビジネスの場で人気のある次の4つのサービスを紹介していきましょう。

  • 楽しもうOffice
  • bizroute
  • bizocean
  • 経費削減実行委員会

必要項目を網羅した引継書テンプレート

引継書のテンプレートは、ネットの各種サイトから入手できます。多くのテンプレートは無料でダウンロード可能です。

テンプレートがあれば、入力項目やデザインなどを考える時間が削減できるので、効率的に引継書が作成できるでしょう。

無料で使えるテンプレートにはさまざまな種類があるので、必要項目が網羅されているテンプレートを選ぶのがおすすめです。

基本的には、下記項目の入力欄が準備されているテンプレートであれば問題ないでしょう。

  • 業務名
  • 内容引き継ぎ実施日・完了日
  • 備考
  • 重要度

なお、多くの企業では、引継書はWordやExcelなどのOfficeソフトを使って作成することになるでしょう。ネットから入手できるものも、ほとんどがWordやExcelのテンプレートです。ただし、ExcelやWordの文書はバージョン管理が難しかったり、スマートフォンやタブレットでは閲覧しづらいなどのデメリットがあります。

そのため、引継書の作成には、クラウドで運用できる専用ツールの導入を検討してみましょう。例えば、Qiita Teamでは引継書を誰でも簡単に作成できます。作成後の加筆・修正や他のメンバーへの共有もスムーズに行えるので、業務効率アップも期待できるツールとしておすすめです。

楽しもうOfficeのテンプレート

楽しもうOfficeは、マイクロソフトのサイトから入手できるテンプレートです。フォーマットに沿って、テキストや画像をいれるだけ簡単に引継書が作成できます。表の行や列も自由に追加可能なので、作業手順が多い業務にも対応可能です。

<概要>

  • データ形式:Word
  • 容量:1,060 KB
  • 用紙設定:A4
  • 公式サイト:楽しもうOffice

bizrouteのテンプレート

bizrouteでは、Excel形式の引継書テンプレートを提供しています。テンプレートの種類は全部で6種類です。

  • A4縦×5種類
  • A4横×1種類

「前任者」「後任者」「項目」「引継日時」「内容」「備考」などが入力可能です。入力項目は必要最低限なので、引き継ぐ業務や項目をリストアップする際に役立つでしょう。

<概要>

  • データ形式:Excel
  • 用紙設定:A4(縦5種類・横1種類)
  • 公式サイト:bizroute

bizoceanのテンプレート

bizoceanでは、引継書のテンプレートを複数提供しています。中でも「業務引継ぎシート(社内業務向け)03」は、複数の人に業務を引き継ぐ際に使えるテンプレートです。項目・内容・開始日などが入力でき、引き継ぎ内容を一覧で確認できるので、抜け漏れ防止にも役立ちます。

なお同サイトでは、引き継ぐ相手が1名の場合のテンプレートなども提供しているので、必要に応じて使い分けると良いでしょう。

<概要>

  • データ形式:Excel
  • 公式サイト:bizocean

経費削減実行委員会のテンプレート

経費削減実行委員会では、引継書関連のテンプレートを多数提供しています。「業務引継書テンプレート」は引き継ぎ業務を一覧形式で記載し、完了後はチェックボックスにチェックを入れることで進捗管理できます。

同サイトからは、他にも「補足資料用」や「スケジュール表」などのテンプレートが入手可能なので、複数のファイルを使って引継書を作成すると良いでしょう。

<概要>

引継書作成のための4つのポイント

分かりやすい引継書を作るためのポイントは、次の4つです。

  • 頻度ごとにまとめる
  • なるべく簡潔にまとめる
  • 引継書の作成を目的にしない
  • 複数人で内容を確認する

ポイントを押さえて作成すれば、効率良く引き継ぎが行えるでしょう。

頻度ごとにまとめる

引き継ぐ業務が多岐にわたる場合には、発生する頻度ごとにまとめましょう。例えば、日次・月次・年次などで整理しておけば、後任者が該当項目を探しやすくなります。

逆に、毎日行う業務が引継書の中に散在していると、実施すべき項目を飛ばしてしまうおそれがあります。

高頻度の業務を最初の方に記載し、半期に1回や年に1回など頻度が少ないものは後ろのページでも問題ないでしょう。

また、現在進行中のプロジェクトや直近で着手する重要な業務については、すぐに引継書を確認する機会が訪れるので、特に分かりやすくまとめておきましょう。

なるべく簡潔にまとめる

引継書に記載する情報は簡潔にまとめましょう。理解を促すために、箇条書きや図表などを使うのも効果的です。

特に、新たに異動してきた人や新入社員に業務を引き継ぐ際には注意が必要です。情報を盛り込みすぎたり、難しい業界用語などを多用するのは避けましょう。

「引継書を読んでも分からないので、別途ネットで検索した」ということにならないように、要点を抑えた引継書を作成しましょう。

引継書の作成を目的にしない

引継書のレイアウトやデザインにこだわりすぎないようにしましょう。引継書の作成自体が目的化するのは本末転倒です。引継書は前述のとおり、後任者が理解できるように要点を簡潔にまとめることが重要です。過不足無い情報を網羅することは重要ですが、不必要な情報を詰め込んだり、デザインの調整に時間をかけるのは避けましょう。

引継書を作成後には、後任者へのレクチャーも行う必要があります。引継書の作成に時間をかけすぎると教える時間が短くなるので、最悪の場合引き継ぎに失敗するおそれもあるので気をつけましょう。

複数人で内容を確認する

引継書がある程度まとまったら、プロジェクトや業務に関わる周りの人にも確認してもらいましょう。複数人の目で確認してもらうことで、業務や項目の抜け漏れを防止できます。

引継書の作成過程で、業務プロセスやフローの不明点などが出てくるケースもあります。その場合には、メンバーと話し合って改善していくことも重要です。改善後のプロセスやフローを引継書に反映できれば、今後の業務の効率化にも貢献するでしょう。

まとめ

本記事では、これからはじめて引き継ぎ業務を行う予定になっている社員に向けて、引継書の作成の流れや活用できるテンプレートなどを紹介しました。あわせて、作成時に押さえておきたいポイントも解説しました。

引継書の作成は、退職時だけでなく、部署異動や長期休暇に入る前などにも必要になります。別プロジェクトに移る際に後輩や新入社員に対して業務を引き継ぐこともあるでしょう。

分かりやすい引継書を作成するためには、ここで紹介したようにテンプレートを使うのがおすすめです。ただし、無料で手に入るテンプレートはシンプルなものが多く、伝えたい項目が網羅されていないケースもあるでしょう。また、WordやExcelでは、作成後のアップデートが難しかったり、データ管理・共有がスムーズにいかないケースもあります。

そのため、引継書の作成とその後の運用を考えると、クラウド型のツールを導入する方が効果的でしょう。例えば情報共有サービスのQiita Teamならば、誰でも簡単に入力でき、共有もスムーズに行えます。どのデバイスでも閲覧・編集が可能なので、引継書を効率的に運用できるでしょう。

引継書の作成や運用で課題を感じている場合には、ぜひ導入を検討してみてください。

Qiita Teamで情報共有をはじめよう