
「業務に活かせる良いマニュアルを作りたい」
「自社は本当に業務をマニュアル化すべきか知りたい」
このように、業務マニュアルの作成をどうすればいいか考えている人は多いのではないでしょうか?
業務のマニュアル化とは、特定の業務を実行するための手順や手法をドキュメントにおこし、明確化するプロセスを指します。マニュアル化は、企業や組織内で業務の標準化や効率化を実現するために非常に重要な手段の1つです。
しかし、マニュアル化に向いていない業務をマニュアル化しようとすると逆効果となり、かえって業務の品質を低下させる可能性もあります。
本記事では、そうならないためにも、業務をマニュアル化するメリットだけでなく、業務をマニュアル化する際の注意点をご紹介します。また、代表的な業務マニュアル、さらにはマニュアル化するべき業務とそうでない業務に関しても解説します。
この記事を読めば、日々の業務に活かせる良いマニュアルを作成できるようになるため、ぜひご覧ください。
目次
業務をマニュアル化するメリット4選
業務のマニュアル化は、業務改善の手段として、また人材育成や組織運営の重要な要素として、多くの企業や組織で取り入れられています。
この章では、業務をマニュアル化することで得られるメリットを以下4つに絞って解説します。
- 業務プロセスを標準化できる
- 教育や研修を効率的に行える
- 業務全体の流れを理解しやすくなる
- 引継がスムーズに行える
業務プロセスを標準化できる
業務をマニュアル化することで、業務の品質を一定に保つことができます。
マニュアルがない場合、「この業務はあの人にしか行えない」と、業務の質が個人の能力やスキルに依存してしまう恐れがあります。
しかしマニュアル化されていれば、担当していたメンバーが急に離職したり異動になってしまっても、速やかに業務を引き継ぐことができます。
またマニュアルには、注意点や業務の品質に影響する要素が明記されています。
その手順に従うことで、従業員自身で業務の流れや責任の所在がつかみやすくなり、作業ミスや抜け漏れの防止、さらには業務プロセスを標準化することにつながります。
教育や研修を効率的に行える
業務マニュアルを活用すると、教育や研修を効率的に行えるようになります。
業務を教える人の品質基準に差がでてしまうと、企業全体の生産性の低下や業務効率の低下を招く恐れがあります。
しかし、業務マニュアルがあることで、その流れに沿ってレクチャーが行えたり、作業を確認することができます。
入社まもない新人や他社からの転職者、また他部署のメンバーでも、問題に遭遇したときに一から調べることなく、自身の力で必要な知識を身に着けたり試したりできます。
とくに新人においては、業務開始の早い段階でマニュアルを提供できるメリットがあります。
多くの知識を事前に身に着けて作業を行うことができ、その分確保できた時間を別の業務に充てられるなど、教育や研修を効率的に行えます。
業務全体の流れを理解しやすくなる
業務のマニュアル化によって、業務全体の流れを理解しやすくなります。
業務にはイレギュラーなことや、まだ覚えていない業務に対応しなくてはならない場面が多くあります。そのようなときにマニュアル化されていないと、全体像が分からず「どうしたらいいかわからない…」とただ時間を浪費してしまう場合があります。
しかし、業務をマニュアル化しておくことで、今まで経験したことのない業務であっても網羅的に流れが視覚的に把握でき、「このあとの手順はこうしよう」と手を止めることなく業務にあたる機会を増やすことができます。
また業務のマニュアル化は、客観的な視点から業務を分析することもできるため、でてきた問題点や改善点を洗い出し、さらに業務全体の流れを透明化させることにも役立ちます。
引継がスムーズに行える
業務の引継をスムーズに行えるのも、マニュアル化のメリットになります。
マニュアル化されていない場合、突然の離職や担当者が休んでしまった際に、代わりに対応できず、弊害が起きてしまう恐れがあります。
しかし、引継ぎ後にわからないことが起こっても、マニュアルがあれば引継ぎをする人が新たに業務を覚えるための手順や注意点が記載されているため解決できることが多くなります。
またマニュアル化は、引き継ぎにかかる手間を減らすことができ、業務の継続性の確保、業務の品質の向上などが期待できます。
業務をマニュアル化する際の注意点3選
この章では、業務をマニュアル化する際の注意点を下記3つ解説します。
- マニュアルが目的になってしまうこともある
- マニュアル通りにしか動けなくなる可能性がある
- 運用や管理に手間がかかる
業務のマニュアル化により、業務品質が向上する一方で、適切な手順が守られない場合にはデメリットが発生する可能性もあります。
どのようなデメリットがあるのか、そしてそのデメリットを回避するための解決策は何か考察してみましょう。
マニュアルが目的になってしまうこともある
業務のマニュアル化で注意する点の一つに、マニュアルをこなすことが目的になってしまう点が挙げられます。
業務を行う際には目的に合わせて、時にはマニュアルにないことを行うことでより良い結果が生まれることもあります。しかし、従業員が単にマニュアル通りに業務をこなすだけになってしまうと、業務の目的や意義を理解することなく、業務を作業のようにただこなすようになります。マニュアルだけに注目していると、業務の質や効率性も低下する恐れがあります。
業務のマニュアル化を行う際には、マニュアルに固執することなく、あくまでも補助ツールとして目的に合わせた最適な業務プロセスを確立することを意識するようにしましょう。
マニュアル通りにしか動けなくなる可能性がある
過度な業務のマニュアル化は、自分で考える力が損なわれる危険性があります。
マニュアル通りにしか動けなくなってしまうと、想定外の状況や問題が発生した際に、自身で適切な判断力を考えることができず、業務の品質やスピードに影響を及ぼすことがあります。
そのため、マニュアル化する業務の範囲や方法を決める際は、従業員の自律性や自己判断力を損なわないように配慮し、マニュアル通りにしか動けないような状況にならないように気を付けましょう。
運用や管理に手間がかかる
業務のマニュアル化には手間がかかり、それが運用や管理に影響を与える可能性があることを念頭においておきましょう。
業務のマニュアルは、作成した後に更新が滞ってしまうと、社員が実際に使用できるマニュアルとはいえず、使用されなくなる可能性があります。
マニュアルの更新や変更が必要になった際は、それに対応するために新たな時間やリソースを割く必要があります。また、業務の詳細をマニュアル化するには、専門知識やスキルを持った人々に協力してもらい作成することも重要になります。このように、マニュアルの運用や管理にはさまざまな手間がかかることに留意する必要があります。
代表的な業務マニュアルとは
業務マニュアルにはさまざまな種類があります。
ここでは、その中から代表的な業務マニュアルを4つご紹介します。
- 作業マニュアル
- 新人研修マニュアル
- 危機管理マニュアル
- 情報セキュリティマニュアル
作業マニュアル
代表的な業務マニュアルの一つに、作業マニュアルが挙げられます。
作業マニュアルは、業務に必要な具体的な手順を詳細に説明するドキュメントであり、業務プロセスの効率性を高めるために重要な役割を果たします。
一般的に作業マニュアルには、作業の目的、手順、必要な道具や材料、安全上の注意事項、および予期せぬ事態に備えた緊急対応計画などが含まれます。
作業マニュアルがあることで、特定の業務に関する知識が属人化されにくく、業務を実行するために必要なスキルや知識を、誰もが見たいときに確認し実行できます。
新人研修マニュアル
代表的な業務マニュアルの中には、新人研修マニュアルが含まれています。
このマニュアルは、新入社員が会社で働くうえで基本的な知識やスキルを習得するために使用されます。
新人研修マニュアルには、以下のような内容が含まれることが一般的です。
- 会社の歴史やビジョン、ミッションなどの基本情報
- 組織の構造や役割分担などの情報
- 業務の流れや手順、ルールや規定などの情報
- ビジネスマナーやコミュニケーションスキルなどの情報
新人研修マニュアルは、社員の育成や業務効率化に大きな役割を果たします。新人研修の教育内容が一定であることで、全社員の知識やスキルの均質化が図られ、会社全体の品質向上につながります。また、新人研修マニュアルは、新入社員が自己学習するための教材としても活用されます。
危機管理マニュアル
次に紹介したいのが、危機管理マニュアルです。
ビジネスシーンにおいて、危機はいつ起こるかわかりません。それは自然災害やセキュリティ上の脅威などの外部要因から、またはビジネスの失敗や問題が原因で内部から起こるかもしれません。いずれにしても、危機が発生した場合に備えて、事前に準備された危機管理マニュアルも代表的な業務マニュアルの一つといえるでしょう。
主にこのマニュアルには、危機が発生した際の対応手順や、事前に危機が発生しないように予防策を講じる方法などが記載されています。
危機管理マニュアルには以下のような内容が含まれることが一般的です。
- 危機の種類とその発生要因のリスト
- 危機が発生した場合の責任者の役割と責任範囲
- 危機発生時の緊急連絡先リスト
- 危機発生時の情報収集方法と報告の手順
- 危機発生時の対応手順とその後のアクションプラン
- 危機対応のためのチーム構成と役割分担
- 危機対応のための訓練計画と模擬演習の方法
などです。
これらの内容は、危機管理マニュアルに記載されているだけでなく、実際に訓練や模擬演習を通じて従業員に浸透させることも重要とされています。
また、危機管理マニュアルは他の業務マニュアルと同様に定期的に見直し、必要に応じて改訂することで、迅速で正確な情報提供ができます。
情報セキュリティマニュアル
代表的な業務マニュアルの中には、情報セキュリティマニュアルも含まれています。
情報セキュリティマニュアルは、企業が保持する情報資産を守るために必要なポリシーや手順、規則などが含まれた文書をまとめたものです。このマニュアルは、主に社員やパートナー企業などにも共有され、情報漏えいや不正アクセスなどのリスクを低減するために活用されます。
情報セキュリティマニュアルには、セキュリティポリシー、パスワード管理、アクセス制限、データバックアップ、ウイルス対策、社内教育、セキュリティ対策の監視・評価など、企業が実施するべき情報セキュリティに関する事項が詳細に記載されています。また、情報セキュリティに関する規制や法律についても言及されている場合が多いです。
また、情報セキュリティマニュアルは、企業が情報セキュリティに関するリスクを正しく理解し、適切な対策を講じるために不可欠です。そのため、情報セキュリティに関する業務を担当する社員はもちろん、全社員がマニュアルのガイドラインを理解し、遵守するために用いられています。
マニュアル化するべき業務の3つの例
マニュアル化に向いている業務には、複数のステップやプロセスを必要としていたり、明確な手順が存在し、一定のパターンがある業務が挙げられます。
また、その業務が複数人で行われることがあり、品質管理やコンプライアンスの観点から一貫性が求められる場合もマニュアル化に向いています。
この章では、マニュアル化するべき業務として、下記3つの例をあげて解説します。
- 業務に一定の手順が必要な業務
- 継続性が必要な業務
- トラブルが発生する可能性がある業務
業務に一定の手順が必要な業務
マニュアル化すべき業務の例として、業務に一定の手順が必要なものがあります。
とくに製造ラインのような一連の作業を必要とする業務において、マニュアル化が有効です。
製造ラインでは、機械や装置を使用して製品を作成するために、多数の作業ステップが必要になります。このステップの際に、標準化された手順を実施することで、不良品の発生を最小限に抑え、品質の一貫性を確保することにつながります。
また、手順をマニュアル化し、必要に応じて更新すると、作業工程の品質も一定に維持することができ、統一された内容でトレーニングを行えたり、知識の共有が可能になります。
継続性が必要な業務
ビジネスにおいて、マニュアル化するべき業務例の中には、引継ぎが頻繁に発生する場合や、後任者がすぐに継続する必要がある場合があります。
経理業務などはその代表的な例です。
経理業務は、企業の財務状況を正確に把握するために欠かせません。
しかし、経理担当者が退職したり休職した際に、業務の引継ぎがうまくいかないと、企業の財務状況に誤りが生じる可能性があります。
そのため、経理業務などの重要な業務においては、業務内容や手順をマニュアル化しておくことが望ましいです。
後任者が迅速かつ正確に業務を引き継ぎ、継続することができます。また、マニュアル化することで、業務の品質管理や効率化にもつながります。
トラブルが発生する可能性がある業務
トラブルのリスクがある場合は、マニュアル化することで発生を予防することができます。
例えば、情報セキュリティ関係の部署やコールセンターなど、顧客対応業務は、重要なマニュアル化対象となります。
情報セキュリティ関係の部署では、セキュリティポリシーや規定に基づいて、従業員が適切に情報を扱うことが求められます。そのため、マニュアルを作成することで、情報漏えいやセキュリティ違反を減らすことができます。
また、コールセンターでは、顧客の問い合わせに対応することが主な業務となります。顧客に誤った情報を提供することや、適切な対応を行わないことがトラブルの原因となることがあります。
こうしたリスクを軽減するために、マニュアルを作成し、適切なトレーニングを実施することが必要です。
このように、企業に起こりそうなトラブルのリスクがある業務については、マニュアル化することによって発生を未然に防止することができるでしょう。
マニュアル化が必要のない業務の2つの例
一般的に、マニュアル化に向いていない業務には、創造性や直感力が必要なもの、状況に応じて柔軟に対応する必要があるもの、または個人的な技能や経験に依存するものがあります。
たとえば、芸術作品の制作や、交渉のような人間関係に依存する業務、あるいは特定の専門分野での判断力が必要な業務などがそれに当たります。
この章では、マニュアル化には不向きな業務の例として、下記2つについて解説します。
- クリエイティブな業務
- 意思決定が必要な業務
マニュアル化に向いていない業務をマニュアル化しようとすることは、逆効果となり、かえって業務の品質を低下させる可能性があります。
業務を適切に管理するために、この章でマニュアル化に向いていない業務を再認識し、効率的な業務の実行と品質の維持につとめましょう。
クリエイティブな業務
マニュアル化に向いていない業務として、クリエイティブな業務が挙げられます。
この業務は、創造性とアイデアの自由な発想が必要であり、マニュアルに従うことでそれを制限してしまう恐れがあります。
たとえばクリエイティブな業務には、広告制作、デザイン、コンテンツ制作などが含まれます。このような業務は、自由な発想力や創造性を引き出すためのフレキシブルな環境が必要です。マニュアル化によって縛られることで、結果的に生産性や品質を低下させ、柔軟な対応力に欠ける可能性があります。
意思決定が必要な業務
意思決定が必要な業務については、マニュアル化が適切ではありません。
意思決定が必要な業務とは、複雑な状況や不確定要素が存在し、経験や知識、洞察力などを必要とする経営戦略や投資判断の業務などです。これらの業務においては、人間の思考プロセスが必要となり、機械的にルール化することができません。
また、マニュアル化された手順に縛られることで、必要な判断や柔軟な対応ができなくなる可能性があります。
そのため、意思決定が必要な業務においては、柔軟な対応ができる人材の育成や、適切なサポート体制の整備が重要となります。
まとめ
本記事では、「業務のマニュアル化のメリット4選!マニュアル化すべき業務の例も解説」という主旨で、業務をマニュアル化するメリットだけでなく、業務をマニュアル化する際の注意点も含めて解説しました。また、代表的な業務マニュアル、さらにはマニュアル化するべき業務とそうでない業務に関してもご紹介しました。
マニュアルを作成するのには時間がかかり、変更があった際には常に更新しなければならないため、運用や管理が非常に大変です。
マニュアル化することで、業務の目的ではなく、マニュアルをこなすことが目的になってしまう危険性もあります。折角作ったマニュアルが使い物にならなかったという残念な事態を避けるためにも、マニュアル化にはプロ集団である外部業者に頼るというのもひとつの手法となります。
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