
社内報とは、組織内での情報共有やインナーコミュニケーションの促進、企業理念・ビジョンを伝えるためのメディアです。社内報の運用がうまくいけば、社員のモチベーションアップやコミュニケーション促進につながるので、業績の向上も期待できます。
また企業理念やビジョンの共有、コミュニケーションの強化などを目的に社内報を発行している企業は多いでしょう。特に昨今のテレワークの普及に伴い、組織内の情報共有を促進するために、社内報を有効活用したいと考えている組織も増えています。
このようにさまざまな狙いや目的があって導入されている社内報ですが、社内報の制作担当者の中には、「どうすれば読まれる社内報を作れるのか」について悩みを抱えている人も多いはずです。
そこで今回は、社内報の目的や必要性について解説し、定番のコンテンツも紹介していきます。さらに、運用を成功させるための5つのポイントや具体的な制作手順なども網羅的に取り上げていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
社内報とは
社内報とは、組織内での情報共有やインナーコミュニケーションの促進、企業理念・ビジョンを伝えるためのメディアです。社内報を上手に活用することで、社員のモチベーションアップや生産性向上、会社への帰属意識の醸成や仕事への愛着なども生まれると期待できます。
以前は紙媒体での発行が主流でしたが、現在はWeb版やアプリ版で社内報を運用している企業も増えています。発行頻度も毎月発行や隔月、四半期、半期など、メディアの特性や企業のリソースなどによってさまざまです。
テレワークの普及を受けて、社内のコミュニケーションの希薄化に課題感を感じている企業にとって、社内報の活用は以前よりも重要性が増しているといえるでしょう。
社内報を発行する4つの目的
社内報の発行には多くのメリットがあります。ただし、社員によっては「社内報は不要なのではないか?」「読む必要性が分からない」と感じている人もいるでしょう。
ここでは、社内報の必要性を伝えるためにも、発行する目的について整理しておきましょう。主な目的は次の4点です。
- 会社の理念や考え方を共有する
- 従業員の意識や行動を統一する
- 社内の情報を共有する
- コミュニケーションのきっかけを作る
会社の理念や考え方を共有する
ひとつ目の目的は、会社の理念や考え方、ビジョンなどを共有することです。トップメッセージや年頭所感、役員のインタビューなどを通して、会社の方向性を発信します。
社内報は、ビジョン・ミッション・バリューなど、会社の目標や存在意義、社会に対して果たす役割などを全社的に共有する際に有効な手法なのです。
社員は日々仕事に追われる中で、企業理念や考え方を意識せずに働いている可能性もあります。また、入社してから年月が経つ中で、社内外の環境が変化して理念や考え方にも変化が生じていることもあるでしょう。さらに、中期経営計画の達成目標なども、適宜社員に発信する必要があります。
このような理由から、社内報を通じて定期的に会社の理念や考え方を共有することが重要になります。そのための媒体として社内報が果たす役割は大きいといえるでしょう。
従業員の意識や行動を統一する
二つ目の目的は従業員の意識や行動を統一するためです。社内報で共有する理念やビジョンは、従業員の行動指針にもなり得ます。
例えば、新サービス・商品の開発を行う際には、企業が目指す姿や達成したい目標に即したものを形にする必要があります。もし、意識や行動が社員ごとにバラバラになっていると、企業が定めているビジョン・ミッション・バリューから外れたサービス・商品を提供することになり、目標が達成できないでしょう。
社内で行動指針を示すことで、社員は自分たちが目指す方向性がわかるようになります。自身の考え方が会社とずれていると自覚した時には、修正を加えて、より会社のためになるような行動に変化させるでしょう。
各人の意識や行動を統一することはチーム力の強化につながり、会社全体の業績にもプラスの影響を与えることになります。
社内の情報を共有する
三つ目の目的は、社内の情報共有のためです。社内報には新商品情報や業績報告などの、業務に直接関わる情報を掲載します。またそれだけでなく、社員の趣味や社内の部活・サークル情報なども発信し、イベント報告なども掲載します。さらに社員紹介を通して、各人の趣味や経歴なども社内に共有することができます。
こうした多様な情報の共有は、社員たちにとって有意義であるだけでなく、その家族にとっても重要です。自分の家族が働いている会社が提供している商品やサービス、業績を深く知る契機になるでしょう。知れば知るほど、その企業に愛着がわき、家族全体でも企業での帰属意識が芽生えるでしょう。
コミュニケーションのきっかけを作る
四つ目の目的は、コミュニケーションのきっかけ作りです。社員紹介、部活・サークルの紹介、各種アンケート結果発表などを通して、各社員の趣味や趣向などのプライベートな側面も発信できます。
企業の中には、他部署の人材との交流がなかったり、全国各地に点在する拠点同士の繋がりが希薄だったりするところもあるでしょう。同じ企業に属しているものの、他社員や他部署のことをほとんど何も知らないという状況では、組織の一体感を醸成することが難しくなります。
社内報を通して知った情報があれば、日頃付き合いのない人ともコミュニケーションを図ることができます。趣味や家族構成、これまでの経歴に似たところが見つかれば、話題の糸口になるでしょう。部署を横断した大がかりなプロジェクトなどではじめて顔を合わす時にも、会話のとっかかりになるので、コミュニケーションや連携を深めるのに役立つはずです。
社内報でよく扱われるコンテンツ
ここでは、社内報でよく扱われるコンテンツの例をご紹介します。以下5つに分類しました。
- 理念・考え方・ビジョンの共有
- コミュニケーション強化
- 社内情報の共有
- インナーブランディング
- その他
理念・考え方・ビジョンの共有
- トップメッセージ
- 役員メッセージ
- 年頭所感
- 中期経営計画の要点記事
- 今年度の業績報告と次年度の計画
- 月間(年間)MVPの報告とコメント・インタビュー
コミュニケーション強化
- 社内イベントの告知・報告
- 拠点・事業部・部署長紹介
- 専門職紹介
- 新入社員紹介
- 座談会記事
- リレー記事(仲の良い社員の紹介、おすすめのランチスポット紹介、拠点所在地の観光地紹介)など
- アンケート(〇〇ベスト10、生産性向上のコツ、テレワークで役立つグッズなど)
社内情報の共有
- 開発チームのインタビュー(商品に込められ想い・開発秘話など)
- 新規プロジェクトメンバー紹介
- 人事異動のお知らせ
- 業界のニュース
- 新拠点開設のお知らせ
- 新商品発表会
- 年間の社内イベントスケジュール
- 社会貢献活動・CSR・SDGsに関する情報
- 社員が活用できる福利厚生制度(利用レポートなど)
インナーブランディング
- 社員インタビュー
- 座談会記事(同期、新任部署長、育休・産休取得経験者、中途採用者など)
- 導入事例
その他
- 著名人や有名人のインタビュー・コラム
- ビジネスマナー紹介
- 部活・サークル紹介・募集
- イベント告知・報告
- お悩み相談コーナー
読まれる社内報を運用するための5つのポイント
社内報を作ったものの、社員に読まれないという課題を抱えている担当者は多いでしょう。「読まれる社内報」を制作するためのポイントについて、下記5点を解説していきます。
- 社内報を発行する目的を明確化する
- 運用媒体を検討する
- 発行した後にリアクションを確認する
- 定期的に発行する
- さまざまな部署・役職の従業員を登場させる
社内報を発行する目的を明確化する
社内報を作る時には、まず目的を明確化することが大事です。社内報の主な目的は、上述したとおり次の4点です。
- 会社の理念や考え方を共有する
- 従業員の意識や行動を統一する
- 社内の情報を共有する
- コミュニケーションのきっかけを作る
会社によって目的は異なるので、自社ではどのような目的で発行すべきか、制作スタッフの間で議論を重ねましょう。
目的を設定する際には、組織が抱えている課題を洗い出すのがおすすめです。「社員間でコミュニケーションが取れていない」「社員で行動や考え方が統一できていない」など、課題を見つけ、それを解決するための手段として社内報を活用することをおすすめします。
目的が定まらないと、読み手にとっても必要性を感じられなくなります。焦点を絞ると、より読者に響く内容の社内報が制作できるでしょう。
運用媒体を検討する
適切な運用媒体で発行することも重要です。媒体は、紙かデジタルの2択になります。デジタルの場合には、Web版やアプリ版などいくつかの選択肢があるので、比較検討して自社に適した運用方法を選択しましょう。
紙で運用するメリットは、手元に社内報が届くため、ページを開いてもらいやすくなる点です。一方でデメリットは印刷・発送コストがかかる点です。紙媒体なので、発行後に修正ができない点もデメリットとして挙げられるでしょう。
デジタル版の場合、コストが削減できます。またパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットなど、マルチデバイスに対応しているので、隙間時間に手軽に閲覧できるメリットがあります。
ただし、社内報が発行されたり更新されたりした際に、社員にしっかり通知しないと閲覧数が伸びないおそれがあります。また、ITツールに不慣れな人材にとってはデジタル版での閲覧にストレスを感じるケースもあり得るでしょう。
このように、コストや利便性など、自社のリソースおよび自社社員の特性なども勘案し、最適な媒体を検討しましょう。
発行した後にリアクションを確認する
社内報をより良いものにするためには、発行後のリアクションを確認して、改善していくことが重要です。
紙媒体の場合には、アンケートなどが効果的ですが、回答率を高めるのに苦労する可能性が高いでしょう。一方、Webやアプリなどのデジタル版の社内報はリアクションの確認が容易です。
例えば、投稿された記事に「いいね」などの各種リアクションマークやコメントが付けば、すぐに管理者は確認できます。投稿者にとってもリアクションによってモチベーションがあがり、次回以降の投稿に対しても積極的になれるでしょう。コメントのやりとりも、社内のコミュニケーションの活性化に寄与するはずです。
社内報の制作担当者は、閲覧数の確認も忘れずに行いましょう。人気のある記事、読まれているテーマや連載については、次号以降も継続したり、周辺のテーマを深掘りしたコンテンツを追加するなど、読者のニーズに寄り添った社内報作りを心がけましょう。
定期的に発行する
多忙な時期でも、計画通りに社内報を発行することが重要です。社内報のスケジュールは、通常は年間計画通りに発行されるものです。読者としても、当然発行されるものとして期待しているでしょう。
繁忙期に重なって発行できなかったということがあると、以後の発行スケジュールにも影響が出てくるかもしれません。このようなことが続くと、社内報が自然消滅してしまうリスクもあります。
読者離れを起こさないためにも、少し発行日がズレても良いので、決められた回数の発行は遵守しましょう。
さまざまな部署・役職の従業員を登場させる
社内報には、さまざまな部署・役職の従業員を登場させましょう。部署や役職が偏ると、読み手も偏るリスクがあります。
例えば毎号営業部門だけがフィーチャーされていると、バックオフィス部門の従業員にとっては興味がわかないかもしれません。また社長以下役員のインタビューのみだと、現場で働いている従業員の活躍に焦点が当たりません。
自分と同じ立場の社員が表彰されたりインタビューを受けている記事を読むことで、モチベーションが上がったり、キャリア形成のヒントになったりします。多様な人材の登場は、コンテンツの幅を広げることにつながります。マンネリ化を避けるためにも、多様性を意識した制作を心がけましょう。
社内報を作るべき企業とは
社内報を制作するのにはコストや手間がかかります。そのため、すべての組織が社内報を制作すべき、とはいえません。社内報を作るべき企業は次の2つのケースのいずれかに当てはまる場合です。
企業規模が大きく情報共有が難しい企業
企業規模が大きく情報共有が難しい場合には、社内報の活用メリットを享受しやすいでしょう。
スタートアップや小規模〜中堅企業であれば、グループウェアやコミュニケーションツールなどを使えば情報共有は可能でしょう。また社員間のコミュニケーションも図りやすいといえます。
一方で、多くの社員を抱えていたり、部署が複数ある場合、拠点が全国各地に所在する場合などには、情報共有がうまくいかないケースもあるでしょう。人的な交流もしづらく、隣の部署の社員のこともあまり知らない、ということも考えられます。複数の事業を展開している場合には、自社の商品・サービスの詳細を知らないということもあり得ます。
そのような企業は、社内報を活用して多様な情報を発信・共有することが、組織力強化のためにも重要になります。
社内報を発行するためのリソースがある企業
社内報の制作には、コストと手間がかかります。中小企業や中堅企業の場合には、社内報制作に回す予算が確保できないケースも多いでしょう。また、予算があったとしても社内報の制作スキルやノウハウがない場合にはクオリティの高いものを作れないおそれがあります。
逆に言えば、社内報の制作経験者やデザイナーなどを抱えている企業であれば、高品質な社内報を作れる可能性があります。また内製化できなくても、予算があれば、社内報の制作会社に依頼する方法もあります。さらに、有料のアプリやサービスを最大限に活用することで、自社に最適な社内報を作ることも可能です。
社内報を作るための5つのステップ
ここでは、社内報を作るための工程を5ステップに分けて解説していきます。具体的な手順は次の通りです。
- ゴール(目的)の設定
- 企画立案
- 取材・執筆
- 編集
- 発行・検証
それぞれ簡単に説明していきます。
ゴール(目的)の設定
まずは、社内報のゴールや目的を設定しましょう。先述のとおり、なぜ社内報を作るのか、社内報を運用することで自社の課題をどのように解決したいかを考えましょう。
社内報に掲載するコンテンツは、ゴールや目的によって変わってくるので、最初の段階でしっかりと方向性を固めることが大切です。
企画立案
次に社内報に載せる企画を考えます。企画は前のステップで決めたゴール(目的)に沿ったものにしましょう。例えば、企業の指針や理念を伝えたいのであれば、社長メッセージや役員のインタビューなどが効果的です。また、よりソフトな内容で社内情報を共有したり、社員の人となりを発信したい時には、社員紹介やアンケート企画が役立つでしょう。
この部分は、前述の「社内報でよく扱われるコンテンツ」などを参考に、社内報の制作メンバーでアイデア出しをしながら、コンテンツを固めていきましょう。
なお、企画は企業の年中行事などにあわせて決める必要があります。例えば、1月であれば社長の年頭所感、4月であれば新入社員紹介などです。また自社の決算発表や新商品発表の時期も通常は決まっているので、まずは年間のイベントスケジュールを洗い出してから企画出しをする方が効率的です。
取材・執筆
企画をもとに取材・執筆を行います。実際に人に取材したり、イベントを取材する際には、制作担当者が取材・執筆・撮影など複数の役割を担うこともあります。また、テキスト原稿や画像データを、当該部署の担当者からもらうという方法もあるでしょう。
新入社員紹介や役員紹介の記事は、担当者もしくは本人にアンケートを送付して返答してもらったり、画像データを送信してもらいます。企業規模が大きく、多くの新入社員が入社予定の場合には、総務部や各部署の担当者などと連携しながら原稿を回収するようにしましょう。
なお、取材・執筆に関しては、自社ではスキルやノウハウがないというケースも考えられます。そのため、外部の制作会社に外注するという選択肢も考慮に入れましょう。
編集
テキスト原稿や画像データ、作成した図版データなどをもとに、誌面にレイアウトしていきます。また、Web版やアプリ版の場合にはそれぞれのツールを使って、編集していきます。
テキストは正確なデータが入っているか、誤字脱字や事実誤認がないかなどを確認します。写真については、顔写真の場合には当人のものが入っているか、商品画像は適切かなどを確認しながら、編集・レイアウトしていきます。また、各記事について、タイトルや大見出し、小見出しなども付けていきます。
編集も取材・執筆同様に、スキルや経験が必要になります。特に紙媒体の場合には、レイアウトやデザインの専門的な知識が必要になるので、内部の専門人材と連携するか外注するか、検討しましょう。
一方で、アプリやWebツールを使う場合には直感的な操作で社内報を制作できるので、デザイナーを雇ったり外部のデザイン会社に外注しなくて済みます。
発行・検証
最後に社内報を発行し、発行後は定期的な検証を行います。社内報の大きな課題の一つに「読まれない」という問題があります。そのため、定期的なアンケートを行ったり、ヒアリングなどをして読者からフィードバックをもらって、適宜改善を加える必要があります。
人気の記事や不人気の記事、扱って欲しい企画やテーマ、取り上げて欲しい人材など、社員から要望や意見を聞き取り、誌面に反映させましょう。
まとめ
今回は、社内報の制作担当者に向けて、目的や定番コンテンツ、制作のポイント、制作フローなどを網羅的に解説しました。
社内報は企業理念やビジョンの共有、コミュニケーションの促進などを図るためにも重要なツールです。うまく活用できれば、組織力の強化につながり、社員のエンゲージメントやモチベーションのアップも期待できます。企業への帰属意識の向上は定着率の向上にもつながるので、人手不足に悩まされている企業にとって、社内報は特に効果的な媒体といえるでしょう。
本記事を参考に、社内報制作の要点を掴み、「読まれる社内報」の制作に着手してみてください。